第8回大会
第8回大会 2002年(平成14年)8月28日 参加校 20校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時
優勝:川越 俊美, 神奈川歯科大学, 6年生
ブラックスチェッカーを用いた睡眠ブラキシズム時のグラインディング運動パターンの分析
一般的に睡眠ブラキシズムは、夜間における顎機能運動と考えられている。睡眠時のブラキシズム運動は強力な咬合力を発揮し、歯の磨耗や歯周組織の破 壊、顎関節の機能障害さらに咀嚼筋の異常活動を誘発する原因となっている。今回、睡眠時のブラキシズム運動を簡便に評価する方法を開発したので、その効果 について報告する。被験者の上顎石膏模型に、ポリビニール製0.1mm厚のシートを加熱圧接して、ブラックスチェッカーを作製し、被験者に2日間就眠時に 装着させた。各被験者の下顎頭の運動経路を調べるために、アキシオグラフを用いて運動を採得した。被験印象採得を行い、硬石膏模型を作製し、SAM咬合器 に付着し、その咬合状態を観察した。グラインディングパターンは、ICPから始まる広い楕円形の後退運動として観察された。咬合誘導様式はCanine Dominance Grinding(CG)、Canine Dominance Grinding with Balancing Grinding(CG+BG)、Group Grinding(GG)、Group Grinding with Balancing Grinding(GG+BG)の4つのカテゴリーに分類された。ブラックスチェッカーを用いることで、睡眠時のブラキシズム運動を評価し、機能的に調和 した香合の再建に応用できることが示唆された。
準優勝:名護 太志, 徳島大学歯学部, 3年生
遠隔歯科医療システムを用いた教育支援
現在、インターネットは多角的に学習手段を結びつけ、新しいインタラクティブな教育環境を実現しようとしている。そこで、学生に要求される膨大な知 識に対するアプローチとして、医学・歯学教育においてもe-learningを積極的に用いることを提唱したい。今回、学生の立場から、インターネットを 介して、大学病院と地域の開業歯科医師との間で特に医療画像についてのカンファレンスを行うことを目的として開発された遠隔医療システムを学生教育支援へ と応用した。本システムによるe-learningの試行を教員3名(小児歯科歯科医師)および、学生10名を対象として行った。システム利用許可を受け た学生は、いつ、どこからでも、画質の高い症例画像情報にアクセスでき、講義時間以外でも、効率的に症例情報を検索・閲覧できた。症例画像を基に学生同士 または教員を交えてのディスカッションをインターネット上で開催することもできる。教員側としては学生側の弱点・盲点等が容易に発見できるようになり、そ れをレポート学習におけるe-teachingや実際の講義に反映することによりインターネットを用いた双方向教育が行えるということが示唆された。
第3位:葛西 理恵, 日本大学松戸歯学部, 3年生
新規口臭除去物質の研究
口臭は、その不快な感じから、広く認識されることがらのひとつである。一般的に、口臭の原因物質として揮発性含硫化合物があげられ、それは口腔内に 存在する細菌によってタンパク質が分解されてできるものであることが知られている。そこで、この揮発性含硫化合物を低下させることにより、口臭を減少させ ることを試みることにした。含硫化合物の定量には、Halimeterを用いた。最初、含硫化合物と反応して不溶性、無臭の硫化亜鉛を形成する亜鉛化合物 によるによる試験を試みた。塩化亜鉛の溶液で処理することにより、揮発性含硫化合物の濃度を低下させることはできたが、塩化亜鉛の純粋なものをヒトに用い ることは好ましいことではないと考えられた。そこで、食品または健康食品の中で亜鉛含量の多いものをインターネットで検索し、カキエキスが亜鉛を多く含有 することを発見した。In vitro試験でカキエキスが揮発性含硫化合物の濃度を低下させることを見出し、ヒトを対象にしたin vivo試験でも、カキエキスが有効であることを見出した。したがって、口臭を除去するための洗口剤の成分として、カキエキスを用いる可能性が示唆され た。
上杉 篤志, 日本歯科大学新潟歯学部, 4年生
患者は歯科治療の何に恐怖を抱いているか?-日本、フィリピン、タイ、U.K.における検討-
患者は歯科治療の何に恐怖を抱いているか、このことを調査することは、患者に安全で快適な歯科治療を提供するためには不可欠な事項であり、疾病治療 という観点からも早期受診のもたらす社会的意義は大きいと思われる。また、国際化しつつある現在では国民性の差異についても認識することは、円滑な歯科治 療を遂行するうえで重要と考える。そこで私は、患者が歯科治療の何に恐怖を抱いているかについて、本学とフィリピン、タイ、イギリスの姉妹校でアンケート 調査を実施し、解析を行った。
その結果、日本では半数以上が抜歯を最も嫌いな処置に挙げており、歯科治療に対する不安感と抜歯処置の密接な関連が伺われた。また日本とイギリスでは処置 が嫌いな理由として恐怖心を挙げる人が最も多く、フィリピンとタイでも二番目に多かった。これは嫌いになる原因が肉体的要因とともに心理的要因も重要であ ることを伺わせた。以上の結果は歯科治療において、歯科医師は疼痛対策と共に不安感に対する心理面での対策も重要視しなければならないことを示している。 我々新世紀の歯科医療を担うものは、患者がより積極的に歯科治療を受けられるよう、安全で快適な新しい歯科治療像の啓蒙と普及に努めなければならないと思 われた。
岡安 晴生, 明海大学歯学部, 4年生
お茶抽出液や漢方成分は、細菌内毒素によるNO産生促進を阻害する
LPSによるマクロファージ活性化に伴うNO産生に及ぼす漢方成分と各種天然化合物の効果を新たに作製した評価系を用いて比較検討した。
マウスのマクロファージ様細胞Raw264.7を用い、10%FBSを含むDMEM培地で培養した。LPSの存在下及び非存在下で各種資料を種々の濃度で 24時間インキュベートし、生細胞数をMTT試薬、培養中のNO濃度をグリース試薬を用いて測定した。二つの試験を同一試料により行うことにより、それぞ れの試験の測定値を関連づかせ、表計算ソフトを利用して作製したプログラムにより50%細胞障害濃度(CC50)、NO産生の50%抑制濃度 (EC50)、及び有効係数(SI=CC50/EC50)を求めた。
漢方成分群は総じて細胞毒性は弱く、また、LPSによるNO産生促進を効率的に抑制した。これは呉茱萸湯において特に顕著であった。茶の抽出液群、及び各種新規天然化合物群では、多くが細胞障害活性を示す濃度でLPSの活性を抑えた。
以上の結果により、漢方成分はLPSによって惹起される炎症反応を効率良く抑制することが期待される。
川木 晴美, 岡山大学歯学部, 5年生
結合組織成長因子(CTGF)定量解析のためのELISAシステムの開発と応用
CTGFは4つのモジュールから成る多機能成長因子として知られているが、我々は特に、CTGFの内軟骨性骨化における多彩な作用に注目している。 本研究では、CTGFの様々な機能の解析のために、より感度・特異性が高い定量解析法の確立を目指した。そこで、各種モノクローナル抗体を組合せ、3種の 特徴あるELISAシステムを確立した。第一のシステムは、CTモジュールとVWCモジュールを認識し、全長CTGFを測定するもので、現有のシステムよ りも感度が良く、全長CTGFの定量・解析に有用である。第二のシステムはN末端部のIGFBPモジュールとVWCモジュールを認識して全長CTGFを測 定するもので、CTGFが断片化されて機能すると考えられる場合での解析にも有用である。第三のシステムはVWCモジュールのみを認識し、単独のVWCモ ジュールの測定が可能であるが全長CTGFは認識しないもので、CTGFの断片化と、VWCモジュールを含む断片の動態を解析するのに有用である。我々は これらのシステムを今後のCTGFの多機能性の解明に応用していくつもりである。
熊谷 直大, 新潟大学歯学部, 4年生
4-META/MMA-TBBレジンセメントの引き抜き試験
接着性レジンセメントを補綴物等の合着に用いる場合に問題となるのは、セメントの硬化後の硬さ及び接着性ゆえ、完全硬化後には余剰セメントの除去が 非常に困難になってしまうということである。そこで、各種レジンセメントの取り扱い説明書では、合着後の比較的早い段階、すなわちセメントが完全硬化する 前に、余剰セメントをある程度除去することを推奨している。ところが、4-META/MMA-TBBレジンセメントの場合、完全硬化前、すなわち餅状期に は粘弾性が非常に高い状態となり、合着修復物のマージン部余剰セメントを除去した場合、マージン内部のセメント層をある程度引きずり出してしまうのではな いかという懸念がある。本研究では、餅状期の4-META/MMA-TBBレジンセメントをマージン部より除去した場合、マージン内部のセメント層にどの ような影響があるかを調べることを目的として実験を行った。その結果、マージンの適合が悪いと、また被着面が水で濡れていると、餅状期の余剰セメント除去 によるセメント層の欠損が大きくなる可能性が高いことが示唆された。
小南 理美, 愛知学院大学歯学部, 5年生
光触媒を含有した歯磨剤の開発
歯のホワイトニングを目的とし、アナターゼ型二酸化チタンを含有した新しい歯磨剤の開発を試みた。
光触媒作用を有するアナターゼ型二酸化チタンを合成し、そのX線回析パターンを作成した。その後、ピーク分析を行い、粉末X線データブックをもとに同定した。同定後、本実験の試料として使用した。
本実験で作製した歯磨剤を、コーヒー、紅茶や食用色素で染色した布に塗布し、紫外線を照射した。一日後、染色した布の脱色を測定した。アナターゼ型二酸化 チタン、リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、D-ソルビット液を混和した結果、均一かつ滑らかで、歯磨剤に適した粘性を得ることができた。ま た、作製した歯磨剤を塗布し紫外線照射した染色布では、対象と比較して明らかな脱色が認められた。この実験の結果から、アナターゼ型二酸化チタン配合歯磨 剤は優れた脱色効力を持ち、また誰もが家庭で簡便に用いる事が可能なホワイトニング方法である。実用化に向けて、安全性試験を続けて行う必要があると考え られる。
小柳 えりな, 長崎大学歯学部, 4年生
ヒト過誤腫から樹立した間葉系幹細胞の性状の解析
歯周治療の目的は、歯周病により喪失した歯周組織を完全に復元させ、機能させることである。この目的を達成する究極の方法は、歯周組織の重要な構成 組織である歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質を復元させ、機能させる再生療法である。特に歯槽骨は生体の中でも骨破壊、骨欠損に対して自然な骨再生が起こ らない唯一部位なので、歯槽骨再生療法の開発が重要と考えられている。このような再生療法を開発するにはヒト間葉系幹細胞の性状を詳細に解析し、種々の分 化調節機構を明らかにすることが重要である。私達は、ヒトの間葉系幹細胞を解析するのに適したHamartomaの一例を経験し、その解析を行った。数種 類の培養細胞を継代したが、その中でSV40 large T antigenを導入したHHC-K細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋肉、脂肪細胞などの種々の間葉系幹細胞への多分化能と自己複製能を保持していることが 明らかとなった。そのため、私達の樹立した細胞株の性状を更に解析することにより、歯槽骨再生療法の開発の手がかりが得られると考えられた。
金剛 寛泰, 広島大学歯学部, 6年生
唾液腺カルシウム濃度の測定によるカリエスリスクテストの開発
カリエスリスクの測定には唾液量、緩衝能や細菌検査など様々な方法が有る。唾液内カルシウムは、歯の再石灰化や歯石沈着などにより齲蝕予防や歯周病 形成に大きな役割を担っている。我々は、唾液カルシウム濃度はカリエスリスクファクターの一つと考えているものの、その測定は煩雑である。そこで唾液カル シウム量を簡単に評価する方法を開発した。
飲料水用カルシウム試薬であるEBTを用いると、滴定操作におけるEDTA量によってカルシウム量を算出できる。これを唾液にも応用した。報告されている 唾液内カルシウム量に近似する5種類のカルシウム溶液の色を赤から青へ変化させるのに必要なEDTA量から唾液カルシウム量への変換表を作成した。これに より5種類の唾液内カルシウム量を簡単に評価できるようになった。この方法で成人唾液のカルシウム量を算出すると、その結果は他者の研究結果とよく合致し た。この方法により唾液カルシウム量の算出が可能であることから、カリエスリスクテストの開発ひいては口腔衛生増進に貢献するものと考えられる。
齋藤 貴之, 東京歯科大学, 6年生
Actinobacillus actinomycetemcomitansバイオフィルム形成因子の解析
Actinobacillus actinomycetemcomitansには、star-like structureと呼ばれる特徴的な構造を持つ集落を形成し、菌体表層に付着因子である長い線毛構造を持っているものがある。本研究で歯周炎患者からの A.actinomycetemcomitansの検出率は、probing depthの増加に伴なって上昇することを明らかにした。さらに、バイオフィルム形成能と線毛関連性rcpAとrcpB遺伝子発現の関係を解析した結果、 rough型菌株にはrcpAとrcpBの発現が認められるがsmooth型は殆ど発現しないことを見出した。これらの結果から、 A.actinomycetemcomitansの線毛関連性遺伝子は、本菌が歯周局所でバイオフィルムとなって定着するために重要な役割を果たしている と考えられる。今後、お茶などの天然物は、A.actinomycetemcomitansにバイオフィルムを作らせない働きがあるか否か検討していきた い。
坂口 賢, 福岡歯科大学, 4年生
デジタルX線撮影における画像データの光減衰への対応
近年歯科医院において使用され始めたイメージングプレート(IP)方式のデジタルX線撮影装置において、撮影済プレートが室内光を露光することによ り画像減衰が起こる事は、ユーザーである歯科医師にあまり知られていない。この事は画像減衰を撮影条件でカバーしようとし、患者被曝線量増加につながる恐 れがある。そこでデジタルX線撮影における画像データの光減衰について測定を行い、それに対する歯科医院での対応策について検討した。
IP 方式のデジタルX線画像装置に使われるプレートは、照度650 luxの室内光10秒の露光で48 %に、光減衰による画像劣化が認められた。この光減衰への対応策として、遮光シートでプレートを被覆する方法を考案した。これにより撮影後のプレートは一 度も室内光に曝されることなく画像化出来るようになった。人骨ファントムのパノラマX線写真を撮影、遮光シートを使用しなかった場合との画像の比較検討を 行った結果、プレート遮光シートを用いる事により、通常の明るさで操作しても画像の劣化はみられなかった。
今回考案の遮光シートを用いることで通常の明るさの室内での操作が可能となり、より安全性の高い画像診断が期待される。
篠崎 昌一, 九州大学歯学部, 5年生
廃棄ガラスの再利用による歯科用グラスアイオノマーセメントの試作
現在環境問題が大きく取り上げられている。一見、私達歯科医師とは無関係のように思える問題であるが、分野の境界線を問わずこの問題に目を向けるべ きである。そこで考えついたのが廃棄物の歯科材料・歯科用器具への利用である。しかし、医療に用いる材料・器具の作製にあたり衛生面での問題が危惧され た。
以上を考慮し一般家庭にも普及しているコップや瓶或いは理化学実験用の廃棄ガラスの利用によるグラスアイオノマーセメントの試作を試みた。市販グラスアイ オノマーセメントの組成から考慮し、粉砕した廃棄ガラスに硬化に必要なAl2O3及びCaF2を加え1400℃での溶解によりセメント用ガラスを調製し た。作製したガラス粉末を市販セメント液で練和し、硬化性を調べた。硬化した試作セメントについて、硬化時間および圧縮強度を測定し、市販セメントとの比 較を行った。Al2O3、CaF2の配合比によりセメントの操作性、硬化時間は大きく変化したが、圧縮強度は約500Kg/cm2で市販セメントより劣っ ていた。実用化のためにはさらなる検討が必要であるが、本研究において廃棄ガラスからセメントを作製できることがわかった。
関根 陽平, 昭和大学歯学部, 5年生
試作薄型マウスガードの着用により選手の運動能力は向上する
(目的)現在日本国内では、危険度の高い7つの競技において、試合中のマウスガード(MG)着用が義務化されている。本研究では義務化競技のMGの 使用状況および選手の意識をアンケート方式により検討した。また従来型より薄型の試作MGを処方し、比較した。(方法)対象は義務化競技(アメリカンフッ トボール、ラクロス、ラグビー、ボクシング)選手とし、アンケートによる選手の意識調査を行った。また希望者に対して試作薄型MGを処方し、競技中の変化 について調査を行った。(結果及び考察)練習中のMG着用率は義務化されている競技においても種目によって差があることが判明した。最も多く使用されてい るMG は熱湯で軟化し口腔内で調整するMGであった。これら従来型MGは厚いため(5mm)、着用時の呼吸・会話が困難であり、運動能力の低下が指摘された。試 作したMGは従来型に比べ、薄型であり(<3mm)、呼吸・発声しやすく、練習中のMGの使用率が上昇した。(結論)MG着用が義務化されている競 技における練習中でのMG着用率の低さは、従来型MGの不快事項に起因することが判明した。本試作薄型MGはこれらの問題点を解消し、選手の運動能力を向 上させることが示唆された。
柘植 琢磨, 日本大学歯学部, 5年生
ホワイトニングが歯科用金属修復物におよぼす影響
近年、カスタムトレーを用いて家庭で歯の漂白を行うホームホワイトニングが普及しつつある。本法の漂白機構は、主剤として用いる過酸化尿素から遊離 する過酸化水素によって着色物質を酸化、これを無色とするものと考えられている。しかし、本剤が金属修復物に及ぼす影響については、文献渉猟の範囲では殆 ど検討されていないのが現状である。そこで今回、ホワイトニング材の適応が金属修復物の電位挙動に及ぼす影響について、歯科用金属合金を用いて検討を加え るとともに、実験の内容を理解し協力を得られた被験者の口腔内金属修復物について測定を行った。
その結果、使用したいずれの歯科用合金においても過酸化水素によって電位が貴になり、酸化が進むことが進むことが示された。また、口腔内における測定で も、過酸化水素の適応によって貴になる傾向を示すところから、過酸化水素は歯科用金属に作用して、その酸化を進行させることが判明した。
本研究の結果から、ホワイトニングを行うにあたって、患者の口腔内に金属修復物が存在する場合では、ホワイトニング剤による酸化を防止する為の保護材の開発が急務であることが示唆された。
永井 裕子, 朝日大学歯学部, 4年生
歯ブラシと舌ブラシが口臭に与える影響
最近、口臭に対する社会的注目度が上がったことで、口臭予防製品、内服用、チューイングガム、含嗽剤、歯磨剤などが販売されている。口臭にはいくつ かの原因があるが、生理的口臭には、口腔に起因する歯垢と舌苔が大きく関与していることが知られている。本実験では、口腔に起因する口臭の原因である歯 垢、舌苔に対し、歯ブラシと舌ブラシを行うことで、口臭に対しどの様な影響を与えるかを検討した。口臭測定には半導体厚膜ガスセンサーを用いた計測器で、 まず、1 日の口臭値(硫黄化合物:VSC)変動を口腔内清掃しない状態で、健康な被験者1人に対し計測を行った。その結果、起床時、食事後2~3時間後に高い直を 示すことが明らかになった。そのことから、昼食後口腔内清掃無しで2時間経過した時点で、口臭を測定し、歯ブラシのみあるいは歯ブラシと舌ブラシを行う群 とで、その後の低い口臭状態の持続を比較、検討した。被験者は健康な若者5人(男性3人、女性2人)と健康な中年男性7人である。結果において、舌ブラシ の併用は低い口臭を持続することに効果的であった。
西村 美千代, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生
姿勢および噛みしめ強さの違いによる咬合接触状態の変化
現在、我々は間接法により歯冠補綴物を作製しているが、通常、試適時に咬頭嵌合位より200~300μm程度高くなることが知られており、咬合調整 が必要となっている。座位診療が一般的な現在では、咬合調整を仰臥位で行うことがある。そこで、本研究では、座位と仰臥位の両姿勢において、噛みしめ強さ を変化させた際の咬頭嵌合位における咬合接触状態を比較し、仰臥位での咬合調整の妥当性について検討を行った。被験者は顎口腔系に異常を認めない成人4名 ならびに片側臼歯部に咬合接触の無い成人1名とした。軽度、中等度および強度噛みしめ時の歯種毎の咬合接触面積(30μm以下)について比較検討した結果 (t- 検定)、軽度噛みしめ時には第一大臼歯において仰臥位の方が座位に比して優位に咬合接触面積が少なかった。(p<0.01)。また、犬歯から第二大 臼歯までの総咬合接触面積では、両姿勢間に軽度噛みしめ時に有意な差が認められた(p<0/01)。したがって、片顎臼歯部の咬合接触の無い患者は もとより、咬頭嵌合位が安定している患者でもある程度の咬合力が負荷されていないと咬頭嵌合位は安定しない可能性があり、咬合調整をする際には座位で行う ことが望ましいと考えられる。
朴 玲子, 大阪歯科大学, 5年生
テトラサイクリン歯の漂白は可能か
本研究では漂白が難しいとされる着色歯に対する漂白処理の可能性を、牛歯によるディスク試料とハイドロキシアパタイト(HA)板を用いてin vitro で調べた。漂白の効果を決定するため歯科用色彩計を用いて測定し、3数値ΔE、L*、C*により漂白効果を判定した。ΔEは色の変化を表し、L*は明るさ の度合い、C*は鮮やかの度合いを表す。機械測色値と目視感による情報を重ねあわせると、L*の上昇もしくはC*の低下が漂白効果を示す。ΔEから、ディ スク、HA板とも1回目の漂白処理においてのみ色が変わっていることがわかった。L*値は、HA板で1回目の漂白処理においてのみ上昇するが、ディスクで は全ての漂白処理で変化しなかった。C*値は、1回目の漂白処理においてのみ、HA板、ディスク両方で低下した。これらのことから、テトラサイクリン歯に 対して漂白処理は有効であることがわかった。しかし、一方で漂白処理の回数の増加が漂白の効果の増大につながることは認められなかった。今回の研究はテト ラサイクリン歯における漂白のメカニズムと漂白方法を解明する上での一助となるであろう。
南出 保, 北海道大学歯学部, 6年生
繊維強化プラスチック型審美矯正ワイヤーの可動たわみ範囲の改善
現在、研究開発中の審美歯列矯正用ワイヤーは、ガラス繊維強化型プラスチック(FRP)構造により金属ワイヤーとほぼ同等の曲げ強さを出している が、曲率半径が小さい曲げに対しては破折に至る。本研究では、シランカップリング剤、重合条件の見直しにより、より大きなたわみまで変形可能になるように 改良を試みた。作製直後のシランカップリング剤を使用し、ガンタイプとボックスタイプの光重合器で重合し、加熱重合を省いたグループでは、破折が 2.5mm以上で起きる比率が改良前の30%から80%へ、3.0mm以上は70%へと、破折たわみ量は顕著に増大した。ワイヤーの破折はレジンとガラス 繊維間の界面剥離が発端になるため、界面強さに密接に関連するカップリング結合と内部気泡の除去が、物性の改良に最も効果的であった。その結果、FRPワ イヤーの破折たわみを従来の平均2.3mm程度から3.3mm程度まで増大させることができ、臨床応用の可能性へ寄与するものと考えられる。
横山 香里, 鶴見大学歯学部, 5年生
インスリン様増殖因子シグナルと咬筋表現型の変化
咬筋などの咀嚼筋は、発生学的な起源が体節ではなく、頭部の不完全体節であることや、胎仔型ミオシン重鎖、胎仔型アセチルコリン受容体が成体でもな お発現していることなど胎仔の骨格筋とは異なる特徴を有している。インスリン様増殖因子(IGF)IおよびIIは胎仔の骨格筋細胞の発生、肥大、表現型の 変化に重要な役割を果たしていることが良く知られている。齧歯類に液状飼料を与えると、固形飼料を与えた場合と比較して速筋化することが知られている。本 研究においてはこの飼料形状によるマウス咬筋の表現型の変化にIGFが関与するかどうかを調べた。マウスを離乳直後から固形飼料で飼育し、6ヶ月齢に達し た時点で液状飼料に変え、さらに1週間飼育した。液状飼料に転換したマウス咬筋のミオシン重鎖IIb(最も速筋型)mRNAの発現量が増加していた。この 結果は液状飼料に転換して1週間飼育したマウス咬筋に速筋化が起きたことを示している。また、液状飼料に転換したマウス咬筋のIGF-IおよびII mRNA発現量は共に減少していた。このIGFsの現象が液状飼料に転換したマウス咬筋の速筋化と関係している可能性があると思われる。
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