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2017 年 1 月 のアーカイブ

第22回大会

2017 年 1 月 8 日 コメントはありません

第22回大会 2016年(平成28年)8月19日 参加校29校(歯科大学全校参加)

タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝/日本代表 – 基礎部門 第1位:神園 藍, 鹿児島大学歯学部, 4年生

Syk活性阻害は間葉系幹細胞の骨分化を促進し脂肪分化を抑制する

間葉系幹細胞(MSC)は培養条件により骨芽細胞や脂肪細胞へと分化できる多能性幹細胞である。MSCは歯周病による骨欠損を再生医療で回復させる有用な移植源であるが、MSCを骨芽細胞へと分化させる初期段階の分子機構には不明な点が多い。
我々はSyk(Spleen Thyrosine Kinase)と呼ばれる非受容体型チロシンキナーゼに着目し、MSCの骨及び脂肪分化におけるSykの機能を検討した。Sykは未分化MSCに強く発現し、骨芽細胞と脂肪細胞への分化に伴い発現が急激に低下した。MSCにSyk特異的阻害剤を施すと、骨分化に伴う石灰化基質形成とOsteocalcinの発現が上昇した。一方、脂肪分化による脂肪滴形成とFabp4の発現は減少した。次にSykの下流シグナル経路を検討したところ、Sykは骨分化時にはPLCγ1を、脂肪分化ではPLCγ2を特異的に活性化し、本シグナルの選別にはSykアダプター分子のGrb2とBLNKが関与していた。更に、Sykの骨分化制御機構には抑制性転写因子Hes1が関与することが示唆された。
本研究により、Syk活性を阻害することでMSCの骨分化を促進し、脂肪分化を抑制できることが分かった。Syk阻害剤は破骨細胞機能を抑制することが報告されており、Sykの機能抑制は骨形成を促進し、骨吸収も抑制する薬剤として骨再生療法に応用できる可能性がある。

 

準優勝 – 臨床部門 第1位:加藤 みなみ, 広島大学歯学部, 4年生

Porphyromonas gingivalisの歯性感染は肝星細胞を活性化し非アルコール性脂肪性肝炎の病態を進行させる

非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH; nonalcholic steatohepatitis) は、肥満に伴う慢性肝疾患で、肝硬変や肝癌などの重篤な疾患へ進行する可能性がある。私が所属する研究室では、Porphyromonas gingivalis (P.g.) 歯性感染が肝臓の炎症や線維化の促進を介しNASHの病態増悪に関わることを報告した。肝星細胞は肝線維化に寄与する細胞で、TGF-β1により活性化される。よって、私はP.g.感染が肝星細胞の線維形成分化やTGF-β1産生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。①NASHモデルマウスへのP.g.歯性感染は肝線維化領域を有意に増加させた。②非脂肪化/脂肪化肝星細胞へのP.g.感染は、Smad やERK経路を活性化し、線維形成分化マーカーの発現を誘導した。TGF-β1刺激肝星細胞でも、同様の変化がみられた。また、P.g.感染は肝星細胞のTGF-β1産生を特に脂肪化細胞で有意に増加させた。以上、P.g.感染により肝星細胞から産生されるTGF-β1が肝星細胞を線維形成細胞へと分化させ、線維化を促進し、NASHの病態を増悪させることが明らかとなった。

 

基礎部門 第2位:小村 晃広, 大阪歯科大学, 4年生

フッ素置換脂肪酸を用いた歯面の化学修飾による着色予防

歯の着色の主な外的要因は飲食・喫煙で口腔内に侵入してくるポリフェノール類やタールといった色素成分である。これらの色素成分が歯面上にあるタンパク質と複合し、強固なステインが形成するとされる。すなわち、歯面上に色素成分をはじくようなコーティング層を形成すれば、着色原因物質が結合できなくなり、根本的に着色を抑制できると考えた。そこで本研究では、水および油をはじくフッ素樹脂(PTFE)と同様の化学構造を有するフッ素置換脂肪酸(PFFA)を用いて歯面上をコーティングすることで、紅茶による着色が低減されるか検討した。その結果、PFFAエタノール溶液(100ppm)に浸漬させて歯面を化学修飾した場合に、効果的に紅茶による着色を抑制できることが分かった。また、歯面上のタンパク質を完全除去した検討では、PFFAによる着色抑制効果が見られなかったため、PFFAの歯面への定着に歯面上にあるタンパク質が関与していることが示唆された。以上の結果から、フッ素含有有機化合物を用いた歯面の化学修飾による新しい着色予防法の可能性が見出された。

 

臨床部門 第2位:小湊 広美, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

腫瘍細胞における放射線照射後の細胞周期動態が放射線感受性に及ぼす影響

放射線治療は口腔がんに対して有効な治療法のひとつである。口腔がんをはじめとして多くの腫瘍細胞では遺伝子変異等によりp53の機能が失われている。したがって、放射線照射によって生じるDNA二重鎖切断は、主にG2/Mチェックポイントを活性化し、細胞周期をG2/M期で停止させるG2アレストを引き起こす。G2アレストの間にDNA損傷が修復されると考えられているため、放射線照射後の細胞周期の変動が放射線感受性に影響することが予想される。しかしながら、従来の方法では、この関係を詳細に調べることは技術的に困難であった。近年、Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator(Fucci)と呼ばれる細胞周期動態をリアルタイムに可視化できるシステムが開発された。本研究では、Fucciを用いて、放射線照射後の細胞周期動態を解析し、G2アレストから早期に解除される細胞群と解除されない細胞群を同定した。さらにこの2つの細胞群の間で放射線感受性が異なることを示した。以上の結果から、放射線照射後の細胞周期動態が放射線感受性に影響を及ぼす可能性が示された。

 

浅野 一磨, 東京歯科大学, 4年生

象牙芽細胞は細胞膜機械刺激をTRPV4とPiezoチャネルで受容し、歯髄ニューロンに感覚情報を伝達する

象牙質への刺激は象牙細管内液移動を誘発する。本研究では、象牙芽細胞が象牙細管内液の移動による細胞膜の伸展機械刺激を受容し、歯髄感覚ニューロンに情報伝達することで象牙質の痛みを発生させると仮説した。そこで、1) 象牙芽細胞の機械受容センサータンパク質のイオンチャネル機構、2) 象牙芽細胞と歯髄ニューロン間の感覚情報伝達機構を検討した。その結果、1) 象牙芽細胞への機械刺激はTRPV4チャネルとpiezo-1チャネルで受容されること、2) piezo-1チャネル活性化に続いて歯髄ニューロンに活動電位が生じることを明らかにした。象牙芽細胞は、象牙細管内液の移動による機械刺激をTRPV4チャネルとpiezo-1チャネルで受容し、神経伝達物質 (ATPとグルタミン酸) の放出を活性化する。これら伝達物質は歯髄ニューロンを興奮させることで象牙質痛が発生する。今回、象牙質痛の発現に関する機械受容メカニズムと神経への感覚情報伝達機構の詳細を明らかにし、仮説の一部を証明できた。これらの知見は、歯科疾患を有する患者に頻繁に見られる歯痛の発生メカニズムの理解を促し、疼痛制御技術の新規開発への根幹をなす。

 

飯島 由羅, 愛知学院大学歯学部, 4年生

歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisのMfa1線毛形成とType IX分泌装置との関連の検討

歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisは、バイオフィルム形成に深く関係するMfa1線毛を発現している。本線毛は、Mfa1、Mfa3、Mfa4およびMfa5タンパク質より構成されるが、その形成メカニズムは不明な点が多い。Mfa5にはType IX secretion system (T9SS)により認識される C-terminal domain (CTD)をコードする領域が存在する。本研究では、Mfa5のCTD削除株(mfa5ΔCTD)およびporU(T9SSに関わるC末端シグナルペプチダーゼをコードする遺伝子)変異株(ΔporU)を作製し、Mfa5の輸送と線毛発現に及ぼす影響を検討した。mfa5ΔCTDの精製線毛にはMfa3、Mfa4およびMfa5が認められなかった。mfa5ΔCTDおよびΔporUでは、菌体での線毛発現量が親株と比較して有意に低下し、Mfa5が菌体内に蓄積した。以上の結果から、Mfa5がCTD依存的にT9SSにより細胞表面に運ばれ線毛に組込まれること、Mfa1線毛の発現とMfa3およびMfa4の組込みに必要なことが考えられた。

 

井上 敬介, 福岡歯科大学, 4年生

Porphyromonas gingivalis 由来LPSはmTORを介して細胞老化を誘導する

Porphyromonas gingivalis由来リポポリサッカライド(pgLPS)が、老化促進因子の1つと される酸化ストレスを引き起こすとの報告があり、また慢性歯周病と細胞老化の特徴であるテロメア長の短縮との関連が報告されているが、これまでのところ歯周病と老化誘導の関連性については殆ど解明されていない。本研究では、「pgLPSが老化誘導に働く」との仮説に立ち、細胞老化を引き起こす可能性と、その作用メカニズムとを併せて検討した。pgLPSは、老化マーカーSA-β-Gal及び、γ-H2AXを増加させた。しかし、他の老化誘導剤で観察されたp53活性化を起こさなかった。一方、pgLPSは、mTOR(オートファジー抑制因子)の活性化を増加させた。また、mTOR阻害剤及び、PI3キナーゼ阻害剤は、pgLPSによる老化マーカーの発現を抑制した。以上の結果から、pgLPSは、一般的な老化誘導に見られるDNA損傷からp53活性化に至る経路とは異なり、TLR4受容体結合後、PI3キナーゼ活性化、そしてmTORの活性化に至る細胞内シグナル経路が関与する機序によって老化誘導に働くことが示唆された。

 

江上 佳那, 北海道医療大学歯学部, 5年生

ワイン絞り粕(パミス)の歯周病予防効果

ワイン絞り粕(パミス)は、ワイン製造過程において、ブドウを圧搾することで排出される。パミスは本邦で大量に発生しており、産業廃棄物として処理するには多額の費用を要するが、現在、この有効な利用法は、堆肥や飼料に限られている。近年、歯科領域では、S. mutansなどのう蝕病原細菌に対する抗菌作用のあることが報告されているが、歯周病原細菌に対する抗菌作用や歯周組織に対する影響に関する報告はほとんどみられない。我々は、パミスの歯周病原細菌に対する抗菌作用を明らかにし、パミスを歯周病予防に活用することで廃棄物を低減できると考えた。本研究では、歯周病原細菌および歯肉上皮細胞に対するパミスとその主成分であるオレアノール酸の効果を解析し、さらにパミス含有の錠剤を試作し、ヒト唾液中の歯周病細菌数と一種の抗菌ペプチドの発現量への影響を検討した。
パミスは歯周病原細菌の増殖を抑制し、口腔上皮から産生される抗菌ペプチドであるPPBPの分泌を促進することが明らかとなった。以上の結果から、パミスには歯周病予防効果があり、オーラルケア製品に応用できるものと考えられ、パミスの新たな有効利用につながることが示唆された。

 

加藤 志奈, 日本大学松戸歯学部, 3年生

歯科診療室内の浮遊微粒子群が細胞に与える影響

歯科診療室内には様々な歯科材料の粉塵が放出されている。比較的大きな粒子はすぐに排泄され、1μm未満の粒子は肺胞にまで達し、健康に害があるとされる。歯科医療スタッフは診療室内で診療に長時間従事することや観血的処置に伴う患者への為害作用を考えると、粉塵による診療環境について知識を蓄積していることは重要と考えられる。本研究では、生体内に流入した浮遊微粒子による炎症誘導や排除機構に関わる影響を検討するためTHP-1誘導マクロファージを用いて免疫学的特性を検討した。
THP-1由来マクロファージ細胞に粉砕した歯科材料を添加して細胞に与える影響を検討したところ、リライン材や即時重合レジン添加群では、LPS刺激と同様な値を示したが、硬石膏添加群で認めることはできなかった。また、炎症性サイトカインの産生も同様な結果を得た。これらのことから、歯科材料により細胞に与える影響が大きく異なることが示された。
歯科診療室内の浮遊微粒子による健康への影響が懸念されている。特に、硬石膏は細胞活性や炎症性サイトカインの産生も認められないことは生体内における異物に対する生体応答が生じないため、健康被害が懸念される。

 

斎藤 諒, 奥羽大学歯学部, 2年生

アドレナリン添加局所麻酔薬による血管収縮作用の組織学的研究

アドレナリン添加局所麻酔薬は歯科臨床で頻用されている。しかし、その血管収縮作用は血中濃度で研究されているため、実際の血管収縮量は明らかでない。そこで、アドレナリン非奏効部と奏効部の組織切片を採取し、血管内径差から血管収縮量を定量した。
Wistar系ラット雄(10週齢、230g)を用いた。セボフルラン全身麻酔で左口腔粘膜へ8万倍希釈アドレナリン添加2%リドカイン0.2mLを注入し、組織を4%ホルマリン灌流固定した。組織標本作成後、抗SMA抗体で血管平滑筋を免疫化学染色した。その組織切片を観察し、デジタル画像処理ソフトウエアでアドレナリン非奏効部と奏効部の血管内径を測定した。統計はMann-Whitney U testで行い、危険率5%未満を有意とした。
両条件で200以上の血管を観察した。血管内径(中央値)はアドレナリン非奏効部15.2μm、奏効部7.8μmであり、強い有意差を認めた(P=0.0000001)。
8万倍希釈アドレナリン添加2%リドカインによる血管収縮が組織学的に確認され、血管収縮率は内径で49%であった。よって、8万倍希釈アドレナリン添加2%リドカインにより血管内径は約半分になることが示唆された。

 

佐藤 孝紀, 北海道大学歯学部, 6年生

催吐薬エメチンの作用機序に関する研究
-用量依存性と最後野ニューロン活動に対する影響-

エメチンは、催吐薬である吐根の成分であり、非常に強い嘔気を誘発することが知られているが、その 作用機序については不明な点が多い。そこで本研究では、味覚嫌悪学習の成否と最後野における 神経活動の変化を指標として、エメチンの催吐作用を定量化することを目標とした。Wistar系雄性ラット (250~350g)を用いた。味覚嫌悪学習ではサッカリンを条件刺激、エメチンの誘発する嘔気を無条件刺激として条件付けを行い、種々の濃度(0.03、0.1、0.3、0.5、1.0、3.0 mM)のエメチン 投与に対するサッカリン飲水量の変化を計測した。エメチン投与後ラットを灌流固定し、c-Fosタンパクの免疫染色を行い、最後野の神経活動の変化を計測した。エメチン濃度0.5 mM、1.0 mM投与群においてサッカリン飲水量は有意な減少を認めた。用量-反応曲線からED50は0.35 mM程度であると推定された。化学受容性嘔吐誘発域である延髄最後野では、エメチン1.0 mM投与群においてc-Fosタンパク陽性細胞数の有意な増加を認めた。エメチンは用量依存的に催吐作用を示し、最後野ニューロンの活動上昇に伴って嘔気が惹起されたと考えられた。

 

鈴江 正義, 長崎大学歯学部, 5年生

チタンへのさまざまな表面処理が接着力に与える影響

研磨紙による研磨、アルミナブラスト、熱処理、アルカリ処理などのさまざまな表面処理をチタンに施した後、チタン金属表面とエポキシ付きピンの接着力を観察することが本研究の主要な目的である。
今回の研究では、表面の粗さを生み出すために、粗さ400~1500番のSiC研磨紙研磨とアルミナサンドブラストを行った。熱処理は粗さ400番の研磨紙で研磨した試験片に対して、400~800℃の処理温度で行った。アルカリ処理は、濃度5MのNaOH、KOH 溶液を用いて60℃で行った。処理後の試験片の性状を明らかにするために、SEM、TF-XRD、引張試験を利用した。
チタンの表面はSiC研磨紙研磨とアルミナサンドブラスト処理後に粗くなり、接着力は処理後の方が高かった。表面が滑らかなほど接着力は低かった。処理温度400~800℃で熱処理を施した試験片は、それぞれ異なる接着力を示した。処理温度650℃で接着力が最高になった。TF-XRDの結果より、600℃でアナターゼが最も多かった。NaOHのナノ構造はKOHのナノ構造に比べて短く太く、引張試験ではNaOH処理を施した試験片の方が高い接着力を示した。

 

瀬川 裕之, 明海大学歯学部, 3年生

マンゴスチン由来成分が口腔癌の増殖・進展に及ぼす影響

口腔癌においては、一般に化学療法、放射線療法および外科療法による集学的加療が行われているが、副作用や機能的欠損は避けられず、またその解剖学的な特徴から術後のQOLに大きな影響を及ぼす。一方、熱帯果実の女王として知られるマンゴスチンの果皮部分にはポリフェノールの1つであるキサントンが存在し、中でもα-Mangostinにおける抗腫瘍作用が報告され、自然食材のため生体にとって毒性の少ない抗腫瘍剤としてその効果が注目されている。α-Mangostinの抗腫瘍効果として、多様な悪性腫瘍に対してアポトーシス誘導と癌遺伝子c-myc発現低下を介しての細胞増殖の抑制が知られているが、口腔癌に対しては不明である。そこでα-Mangostinの口腔癌に対する増殖・浸潤抑制の検索を行った。ヒト口腔癌のc-myc発現株にα-Mangostin、TRAILを 共同作用させた際の増殖抑制及びアポトーシスの状態および細胞周期について解析した。以上の結果、α-MangostinはTRAILと共同して、アポトーシス細胞死を介して口腔癌治療に貢献する可能性を秘めている事が示唆された。

 

関本 愉, 日本大学歯学部, 5年生

若年健常者における嗅覚・視覚刺激による唾液分泌量および成分解析と咳反射の閾値に関する研究

摂食嚥下障害患者に対する治療やリハビリテーションの研究は、様々なものが報告されている。しかし、食物を認識する先行期が摂食嚥下機能に及ぼす影響を検討したものは少ない。近年、サブスタンスP濃度や唾液分泌量が摂食嚥下機能の向上に関与するという報告があり臨床的に注目されている。そこで、先行期に影響を与える嗅覚・視覚刺激が唾液の分泌量および唾液中のサブスタンスP量に及ぼす影響を検討した。実験は以下の条件(①安静時、②嗅覚刺激因子 1、③嗅覚刺激因子 2、④嗅覚刺激因子 2+視覚刺激:因子 3)において唾液を採取した。全ての条件後に咳テストを行い、むせやすさを確認した。その結果、因子 1は他の条件と比較して、サブスタンスP量を増加させた一方、唾液分泌量を減少した。因子 2、3はサブスタンスP量に影響を与えなかったが、唾液分泌量を増加させた。いずれの因子もむせやすさに影響を与えなかった。したがって嗅覚・視覚刺激は、唾液分泌量および唾液サブスタンスP量に影響を与える可能性が示唆された。このことから、摂食嚥下障害の病態に有効な先行期の刺激因子を選択することが、摂食嚥下機能の向上に寄与することが示唆された。

 

高橋 颯, 岩手医科大学歯学部, 4年生

細胞特異的蛍光タンパク発現マウスと組織透明化を用いた組織3次元イメージング解析

【問題点】我々は、発生中の組織はその構造が時間とともに大きく変化する事を学んだ。しかし、通常の組織切片から、それを立体的にイメージし理解するのはとても困難と感じた。
【仮説】遺伝子改変マウスと組織透明化技術を用いることで、組織を3次元的に観察する新たな技術を構築することができるのではないか。
【方法】口腔上皮に赤色蛍光タンパクが発現するマウスと、新生血管に緑色蛍光タンパクが発現するマウスをかけあわせたマウスから下顎骨と唾液腺を摘出し固定、脱灰後(下顎骨のみ)、組織透明化液に浸漬した。これらをライトシート顕微鏡で撮影し、3次元構築をおこなった。
【結果】マウス下顎骨、唾液腺に対して最も効率の良い組織透明化の手法を確立した。ライトシート 顕微鏡によって3D画像を構築し、それらの組織における血管侵入様式を詳細に観察する事ができた。
【結論】本研究にて確立された技術は、組織の立体構造を直感的かつ正確に理解するのに大変有用であると考えられた。今後この技術を利用して、新たな組織発生メカニズムが解明されると期待できる。

 

髙濱 暁, 松本歯科大学, 4年生

RELM-β/FIZZ2の歯根形成過程における局在

Resistin-like molecule-β/found in inflammatory zone 2(RELM-β/FIZZ2)は消化管や肺胞上皮で局在が認められる分泌タンパク質で、糖代謝や炎症に関与すると考えられている。本研究では、歯の発生過程におけるRELM-β/FIZZ2の局在を明らかにする目的で、免疫組織化学的に 観察を行った。蕾状期歯胚において、歯槽骨周囲で陽性反応が認められたが、歯胚内部に特異的な反応は認められなかった。帽状期および鐘状期では、一部の内エナメル上皮で弱い陽性反応が観察 されたが、他のエナメル器、歯乳頭および歯小嚢は陰性であった。歯根形成期になるとヘルトヴィッヒ 上皮鞘の細胞が陽性反応を示し、ヘルトヴィッヒ上皮鞘と歯乳頭および根尖部象牙質との間にRELM-β/FIZZ2陽性の基質が認められた。この陽性反応は、歯根が伸張しOsteopontin陽性のセメント質基質が形成されると歯根上部で消失したが、ヘルトヴィッヒ上皮鞘近傍では局在が維持 されていた。以上の結果から、RELM-β/FIZZ2はヘルトヴィッヒ上皮鞘の細胞が歯乳頭側へ分泌し、歯根の伸張ならびにセメント質形成を調節している可能性が示唆された。

 

武田 渉, 新潟大学歯学部, 4年生

好中球エラスターゼがマクロファージの貪食能およびサイトカイン産生に及ぼす影響

細菌性肺炎が重症化すると、好中球はエラスターゼを放出し、病原細菌を分解することで生体防御に関与する。一方、好中球エラスターゼは自己組織を傷害する可能性が報告されている。しかし、好中球エラスターゼが宿主の感染防御機構にどのような影響を及ぼしているかは不明である。本研究では、好中球エラスターゼがマクロファージの貪食能およびサイトカイン誘導能に与える影響を解析した。THP-1細胞をPMA含有培地にて培養し、マクロファージ様細胞に分化させた。分化した細胞に好中球エラスターゼを添加し、マクロファージに対する細胞傷害性および貪食能に及ぼす影響を解析した。続いて、好中球エラスターゼがマクロファージのサイトカイン産生量に及ぼす影響を解析した。解析結果より、好中球エラスターゼはマクロファージの生存率に影響を与えなかったが、マクロファージの貪食能を約70%低下させた。また、IL-6、IL-8、およびTNF-αの産生を減少させた。以上より、過度の好中球エラスターゼの放出は、宿主の自然免疫応答を抑制し、感染拡大の一因となる可能性が示唆された。

 

武部 克希, 大阪大学歯学部, 4年生

肺炎球菌のコリン結合タンパク質が病原性に果たす役割の解析

肺炎球菌は、市中肺炎の主たる原因となる口腔レンサ球菌である。本研究では、肺炎球菌の機能未知な菌体表層タンパク質に着目し、その病原性に果たす役割の解析を試みた。
ゲノムデータベースを用いた相同性検索から、菌体表層タンパク質である16種類のコリン結合タンパク質を選出した。16種類のうち、機能未知である3種類のタンパク質について菌株間における分布を確認した。その結果、CbpJとCbpLの2種類のタンパク質が肺炎球菌に広く保存されていることが示唆された。バイオインフォマティクス解析から、CbpJは推定シグナル配列とコリン結合リピート 以外のドメイン構造を持たないが、CbpLはそれらに加えてカルシウム結合ドメインを持つことが示された。次に、相同組換えを利用して各遺伝子の欠失変異株を作製した。野生株と遺伝子変異株を用いてマウス肺炎モデルにおける病原性の変化を比較したところ、cbpL遺伝子欠失株は野生株と大きな病原性の差が認められなかったが、cbpJ遺伝子欠失変異株の病原性は有意に低下した。これらの結果から、CbpJは肺炎球菌の新規病原因子であることが示唆された。

 

梨本 尚, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 3年生

各種清涼飲料水の酸蝕効果とStreptococcus mutansの増殖に与える影響について

本邦で市販されている清涼飲料水は低pHを示すものが多く、習慣的に摂取する者では酸触症の発生が危惧され、微小な酸触症の蓄積はう蝕発生への足掛かりとなることが危惧される。そこで、私達は 各種清涼飲料水中に含まれるリン酸濃度とpHを測定すると共に、硬組織試験片としてヒト抜去歯からエナメル―象牙質ディスクを作製し、実験的に各種清涼飲料水中で振とう培養することにより、溶液中に溶出したCa濃度をメタロアッセイ法および原子吸光法で測定した。あわせて、各種清涼飲料水がStreptococcus mutansの増殖に与える影響についても検討した。その結果、各種清涼飲料水のpHは3~4、リン酸濃度は60.0㎎/dl前後を示した。各種清涼飲料水中へのCa溶出量は、8.0~12.0㎎/dlであった。さらに、各種清涼飲料水中のStreptococcus mutansのコロニー数は、対照群の100分の1以下に減少した。
以上の結果から、各種清涼飲料水中には高濃度のリン酸が含有されているものが多く、その結果として溶液のpHは3~4前後を示し、歯の酸蝕に影響を与えるものと考えられる。また、この低pHは、耐酸性であるStreptococcus mutansの生息域をも超えるものだと考えられる。

 

福田 浩信, 鶴見大学歯学部, 3年生

オピオイドペプチドBCM7を分解する口腔内乳酸桿菌のDPPⅣ活性の調査

牛乳中の主要タンパク質であるカゼインの一種、A1βカゼインから、体内での吸収過程においてβ-casomorphin7(BCM7)というオピオイドペプチドが形成される。健常者ではBCM7は体内でDipeptidyl Peptidase-Ⅳ(DPPⅣ)酵素によって分解されるが、自閉症者や一部の乳幼児ではこの酵素が欠乏しているため体内へ蓄積され、自閉症悪化や小児の突然死の一因と報告されている。これまでの研究で一部の乳酸菌にDPPⅣ活性があることがわかっており、上記疾患の予防に役立つと仮説を立てた。そこで、健常ヒト口腔から分離した乳酸菌のDPPⅣ活性を調べた。菌体の抽出成分と酵素基質とを反応させた後の吸光度を比較したところ、70株中11株が陽性を示した。そのうち5株は非常に高い活性を示し、2株はL.salivariusL.crispatusであった。高活性が明らかで陽性対照として用いたのはL.gasseriであったが、同菌種の別菌株では非常に活性が低かったことから、DPPⅣ活性は乳酸菌の菌種ではなく菌株に依存すると思われた。本研究から口腔常在Lactobacillusの10-20%程度にDPPⅣ活性の高い菌株の存在が明らかになった。今後は、集団検診などで簡便に検出する方法を開発する研究が必要であり、高活性株を摂取するという新たなプロバイオティクスを期待させた。

 

本田 梓, 徳島大学歯学部, 5年生

血行動態変化を予測できる非侵襲的な動的指標を求めて

歯科治療中の体位変換や全身麻酔導入後の突然の低血圧は、心筋虚血・脳虚血などの重篤な合併症の引き金となる。今回、非侵襲的なモニターとして頻用されているパルスオキシメータによる脈波形の呼吸性変動(PVI)が、輸液反応性や低血圧を予測する指標となり得るかどうかを後ろ向きに検討した。
全身麻酔下口腔外科手術患者の麻酔記録をデータサーバから参照し、PVIが一回拍出量変動(SVV)と同様に、膠質液投与後の一回拍出量増加(≥10%)を予測できるか受信者操作特性(ROC)曲線を用いて解析した。PVIはSVVと同程度の感度、特異度をもって輸液反応性の有無を予測することが可能であった。続いてPVIが全身麻酔導入後の低血圧(≥30%)を予測することができるかどうかを評価した。PVIは閾値14.9%、感度93.3%、特異度91.7%で低血圧を予測できた。また、ROC曲線下面積が0.96と高い予測信頼度が得られた。
パルスオキシメータの呼吸性変動は、循環血液量不足や血圧低下を高い感度、特異度をもって予測することが可能であり、合併症回避のための有用な非侵襲的モニターになると思われる。

 

丸 恵莉香, 日本歯科大学生命歯学部, 5年生

印象術式の違いが術者のストレスに与える影響

本研究では、デジタル技術を援用した印象術式と従来から使用されている2種類の印象術式とが、術者へ与えるストレスについて検討を行った。
印象採得経験者として臨床研修医を、印象採得未経験者として学部1年生を研究協力者とした。印象採得の対象として、上顎左側第1小臼歯へのCAD/CAMレジンクラウンを想定した支台歯を選択した。印象術式は、精密印象法である全顎用既成トレーを用いた寒天・アルジネート連合印象法、全顎を対象とした個人トレーによるシリコーン単一印象法、口腔内スキャナーを用いた光学印象法の3種類を選択した。被験者から得られた印象採得前のアミラーゼ活性値から後に得られた値を減じ、絶対値とすることで各被験者におけるストレスの変化量と設定した。結果から、光学印象はアルジネート印象、シリコーン印象と比較して、優位に低い変化量と短いチェアタイムとを示した。アルジネート印象とシリコーン印象の間に差は認められなかった。また、印象経験の有無、印象術式の違いについては、どの条件においても有意な差は認められなかった。
以上のことから、光学印象は、チェアタイムも短く、術者に対してストレスの変化が少ない印象法であることが示唆された。

 

村田 亜志美留, 神奈川歯科大学, 3年生

イヌと飼主間でのイヌ口腔細菌の疫学と伝播

イヌは、日常生活で家族の一員として密接な関係にあるコンパニオンアニマルである。Porphyromonas gulaeは、イヌの歯周炎に関連した黒色色素産生偏性嫌気性菌であり、ヒト口腔には存在せずイヌ 口腔で検出される主要な菌種の1つである。そこで、P. gulaeのイヌと飼主間での伝播の可能性を検討するため、P. gulaeの存在をイヌと飼主の口腔内試料で検討した。6匹のイヌ(1-14 yrs.)と飼主7名 (5-63 yrs.) の歯垢を滅菌綿棒により臼歯部の歯頸部から採取した。P. gulae分布の決定には、16S rRNAを利用したPCR反応により行った。ヒト歯肉線維芽細胞への付着とサイトカイン生産誘導能について検討した。さらに、P. gulae ATCC 51700株の生菌を3週齢雄性SDラット口腔へ直接接種後、歯槽骨吸収量を測定した。その結果、P. gulaeは、3名の飼主の歯垢から 検出された。P. gulae ATCC 51700は、P. gingivalis ATCC 33277と同様にヒト歯肉線維芽細胞に付着し、BALB/cマウス腹腔マクロファージからサイトカイン産生誘導能が認められた。P. gulae 感染群の歯槽骨吸収量は、P. gulae 非接種群に比べ有意に増加していた。本研究結果から、P. gulaeは、飼いイヌから飼主へ伝播することが確認された。従って、P. gulaeは、ヒト歯周疾患の病因に重要な役割を果たしていることが示唆された。

 

村松 祐也, 九州歯科大学, 6年生

ゲラニルゲラニオールはPPARγの発現を誘導しチアゾリジン系抗糖尿病薬の効果を増強する

糖尿病は進行すると深刻な合併症を生じる。糖尿病有病者の増加が発展途上国で著しく、安全かつ安価な治療や予防法が望まれている。核内受容体PPARγは、細胞の糖質代謝や脂肪細胞分化において重要な役割を果たす。PPARγの活性化は、糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善し、血糖値を低下させる。また糖尿病の原因となる肥満などによりPPARγの発現が低下することが知られている。よって、PPARγの発現を誘導したり活性化したりする因子は糖尿病の予防や治療薬の候補として注目を集めている。食物成分由来のゲラニルゲラニオール(GGOH)は脂質や糖質代謝に関連するが、その作用には不明な点が多い。本研究では GGOHがPPARγ発現を誘導し、チアゾリジン系抗糖尿病薬ロシグリタゾンなどのPPARγアゴニストの効果を増強させることを明らかにした。
GGOH処理は前脂肪細胞におけるPPARγの発現を誘導した。PPARγの活性化を脂肪分化能で評価したところ、GGOHはロシグリタゾンのPPARγアゴニスト作用を増強した。しかしながらGGOH単独ではPPARγの転写活性に影響を与えなかった。
PPARγ発現誘導能を有し食物成分由来で安全かつ安価なGGOHは、特にPPARγアゴニストと組み合わせることにより全世界で蔓延する糖尿病の予防や治療薬の候補となり得るかもしれない。

 

山家 怜, 昭和大学歯学部, 5年生

口腔内ディスバイオーシスにおける細菌アミノ酸代謝の影響

口腔内細菌叢の乱れ(口腔内ディスバイオーシス)は、歯肉炎を初めとした様々な口腔内の病態形成に重要と考えられている。歯肉炎は非特異的な細菌の集積(デンタルプラーク)によって起こるとされているが、その詳細な発症メカニズムは明らかになっていない。歯肉に接するデンタルプラークの一部は歯肉上皮細胞に取込まれ、何らかの影響を及ぼすことが予想される。そこで、本研究課題では、プラーク細菌におけるアミノ酸代謝と上皮細胞の相互作用を明確にすることで、このディスバイオーシスについてより良く理解できるのではないかと考え、蛍光顕微鏡を用いた上皮細胞でのオートファジー解析を通じて、プラーク蓄積などを原因とする非特異的歯肉炎の病態形成の解明を目指した。その結果、細菌アミノ酸、特にロイシンなどの分岐鎖アミノ酸の代謝異常は細胞オートファジーに影響を及ぼすことが明らかとなった。口腔内ディスバイオーシスによって誘導される細菌のアミノ酸代謝異常が歯肉炎の発症に関与することが示唆された。

 

山崎 天地, 九州大学歯学部, 4年生

大学生の社会的ネットワークと学業成績の関係

社会的ネットワークは個人の思考や行動に影響を与えるとされ、学業成績にも影響すると考えられる。本研究では、社会的ネットワークとして友人とのつながりを評価し、学業成績と関連するのかを調べた。
歯学部生42人に質問票調査を行い、重要なことや悩みを相談する人を学年内から挙げてもらい、社会的ネットワークを評価した。ネットワーク解析によって、学年内に相談する人がいない者、一方的に相談するか相談を受ける者、お互いに相談する関係にある者に対象者を分けた。また、学業成績は、前年度の全ての履修科目におけるGPの平均点数を用いた。
ネットワークと学業成績の関係を調べた結果、お互いに相談する者は、GPが2.0未満の者が少ない傾向にあり、お互いに相談しあう友人が学年内にいる者は学業成績が良かった。また、相談しない者もGPが2.0未満の者が少なかったが、GPは2極化していた。つまり、相談する人が学年内にいない者の中にも学業成績の良い者がおり、人的環境に影響されず学習能力が高い者がいた。

 

山下 健太郎, 岡山大学歯学部, 4年生

線維芽細胞増殖因子群(FGFs)が歯胚発生に及ぼす影響の解析

イヌやヒトなどの高等動物は、乳歯と永久歯が顎骨内に発生する「二生歯性」を有しており、生涯において歯の生え替わりを可能としている。しかしながら、同一個体内に存在する乳歯と永久歯との発生期間および生存期間は大きく異なっており、それぞれ異なる時間軸が存在する。上皮間葉相互作用を基礎とする歯胚発生の分子基盤は、これまでに多くの基礎研究が進められてきたものの、その時間軸要素を制御する因子は未だ明らかにされていない。
私たちは、同一個体内の乳歯・永久歯の発生の違いを比較することにより、発生時間軸を制御する分子の探索・検証が可能ではないかと考えた。そこで本研究では、イヌ由来の乳歯歯胚ならびに永久歯歯胚における発現遺伝子群の比較検証から、線維芽細胞増殖因子群(FGFs)を見出し、これらの分子がマウス歯胚の発生現象に及ぼす影響を解析した。
FGFsの添加培養によって、FGF2は間葉細胞の硬組織形成の分化促進・間葉組織の骨様組織化誘導、FGF14はエナメル芽細胞の増殖・間葉細胞の分化促進が示唆された。本研究結果により、FGFsはそれぞれ特徴的に歯胚発生に関わる上皮ならびに間葉組織の細胞増殖や分化、形態形成に影響を及ぼすことが示された。

 

吉原 光, 朝日大学歯学部, 4年生

使用済みアルジネート印象材から床用研磨材を創る

アルジネート印象材の成分中には強化材として珪藻土が大量(約70%強)に含まれることが知られている。珪藻土は埋没材の耐火材成分、ガラスとしての陶材や成形修復材料のフィラー成分として歯科領域では頻用されている。本研究では使用済みアルジネート印象材を焼却しアクリルレジンの仕上げ研磨材としてのリサイクル効果を検討した。練和した後にゲル化したアルジネート印象材を焼成し、粉末を入手し研磨材とした。インレーワックス6gに対して抽出粉末が3gとなるように調整し、棒状の研磨材を試作した。比較対象として市販珪藻土、歯科用艶出し研磨材(テルキジン)、珪藻土を含有しない棒状ワックスも準備した。研磨試験片には市販アクリルレジンを用い、円盤状に重合した。研磨したレジン試験片は表面光沢度(Gs60°)、表面粗さ(Ra)の値により評価した。市販レジン床用艶出し研磨材が最も大きな研磨効果を発揮したが、表面粗さに関してはアルジネート印象材由来の試作珪藻土も同等な効果が得られることが判明した。以上のことから、アルジネート印象材を焼却して得られる珪藻土は、アクリルレジンの艶出し研磨材としての適用が可能であることが認められた。

 

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