ADA Annual Session is coming…
ADA Annual Session in Orland, FL への
ご参加を考えている方は,まず公式サイトをご覧ください。
Preliminary Programも ウェブ と PDF で閲覧できます。
SCRP/SCADA 関連情報については,MLでもご案内する予定です。
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第16回大会 2010年(平成22年)8月20日 参加校22校
タイトルおよび発表内容要旨 (上位入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時
ガムやキャラメルに代替甘味料を応用したう蝕予防は広く行われているが、和菓子にはほとんど使われていない。代替甘味料を用いて味に遜色のない低う蝕誘発性まんじゅうが生産出来れば、世代を越えて広くう蝕予防に貢献できると考え、ショ糖の代わりにキシリトール、エリスリトール、トレハロース、マルチトールを使って、赤穂市の老舗和菓子店の協力で試作を行った。マルチトール以外の甘味料は餡には使えないこと、皮にはマルチトールが利用できないことが判明したので、マルチトールを餡に、皮にキシリトール、エリスリトール、トレハロースを添加した3種類の試作品を準備した。糖非添加培地に各まんじゅう成分を加え、人工プラーク形成試験を行った。いずれの組み合わせも細菌の増殖は抑制しなかったが、マルチトールとキシリトールの組み合わせは、矯正線への細菌の付着と酸産生の両方を抑制した。
代替甘味料を複雑な製造工程をもつ和菓子に応用することの難しさを知ったが、マルチトールを餡子に用いることが可能であったことから、他の部分にキシリトールを使えば、付着と酸産生の両者を抑制する、低う蝕誘発性和菓子の開発が可能であることが示唆された。
ペリオスチンは、歯根膜に特異的な分泌蛋白であり、基質間相互作用に関与すると考えられている。ペリオスチン-/-マウスでは、切歯の萌出遅延のため形成端の圧縮とエナメル質・象牙質の異形成が生じる。そこで、ペリオスチンの作用を明らかにするために、我々は、野生型とペリオスチン-/-マウスの切歯歯根膜において、I型コラーゲンとそれに結合するフィブロネクチンの局在を組織化学的に検索した。その結果、野生型マウスの歯根膜には均一なI型コラーゲンが認められたが、ペリオスチン-/-マウスでは、不均一かつ局所的に蓄積したI型コラーゲンを観察した。一方、フィブロネクチンは、野生型マウスにおいてI型コラーゲンと共局在したのに対して、ペリオスチン-/-マウスでは著しく減少していた。従って、ペリオスチン欠損状態では、フィブロネクチンとI型コラーゲンは共局在しないと考えられる。以上、ペリオスチンは、フィブロネクチンとI型コラーゲンの共局在に関与すること、また、歯根膜におけるフィブロネクチン、I型コラーゲン、ペリオスチンの複合体が切歯の持続的萌出を可能性にすると考えられた。
本研究では、ガム様の食感を持ち、熱を加えることなく簡便に作製できるグルテンガムを作製し、使用した際の唾液量、唾液中糖度および筋電図を市販ガムと比較検討した。
グルテンガムはグルテン、キシリトールおよび水を練和して作製した。なお、対象は市販のキシリトールガムとした。唾液量は5名の被験者を対象に10分間測定、また咀嚼時唾液のBrix値を測定し、溶出する糖の指標とした。さらに、筋電計を用いて咬筋と側頭筋の筋放電量を測定した。
咀嚼開始5分間の唾液量は市販ガムが多かったが、次の5分間では差は見られなかった。Brix値の測定では、市販ガムが測定開始直後は高く、その後、急激に減少するのに対し、グルテンガムではスタート時の値は低いものの、その後の減少量は少なかった。筋電計を用いた測定結果から、グルテンガムは市販ガムに比べ、弾力性が強く、その性質が長時間維持することが示された。
グルテンガムは糖の放出量がゆるやかで、熱に弱い生物製剤のみならず、さまざまな薬剤を添加する担体として有用であると考えられる。また、グルテンガムは、弾力変化が少なく、長時間にわたり咀嚼筋の活性化をもたらす性質を有することも示唆された。
鎮静薬や催眠薬として使用されるバルビツール酸誘導体も一般的な薬物と同様、小児で高い感受性を示す。この機序の1つとして、年齢における肝代謝酵素活性の差異が示唆されてきたが、バルビツール酸誘導体の作用終結は再分布によると考えられており、年齢による肝代謝酵素活性の差異のみが感受性の違いを引き起こす原因となっているとは考えにくい。われわれはバルビツール酸誘導体の感受性の差が、年齢に伴うGABA神経系の機能変化に起因するのではないかと考え、シナプス間隙GABA量を調節しているGABAトランスポーター(GAT)に着目し、マウス週齢とチオペンタール麻酔効果との関連性を検討した。
実験にはICR系マウス(♂;3,5,7週齢)を用い、正向反射消失を指標としてチオペンタールの麻酔作用を比較検討したところ、われわれも幼弱マウスにおいてチオペンタールに対する高感受性を認めた。しかし、GAT輸送活性には週齢差が認められなかったものの、GATの特異的阻害薬に対する感受性に週齢差を認めたことから、チオペンタール麻酔作用の週齢差に対して中枢性GABA神経系の関与、特にGATの関与が強く示唆された。
昨今、環境問題への関心が高まる中で、私たちは歯科材料を用いた環境問題への取り組みを検討しました。
歯科と材料学の関わりは深く、歯科医療を行う際に様々な材料が使用されています。金属、セラミックス、レジンが口腔内修復物として使用され、また石こう、ワックス、埋没材、印象材が修復物の作成に使用されます。これらの材料は修復作成後、ゴミとなり医療廃棄物として処理されています。大量の医療廃棄物が回収されていますが、リサイクルされているのはそのうち数%にしかすぎません。
私たちは、歯科医療廃棄物として大量に廃棄される石こう・埋没材に着目しました。これらの成分を解析し、殺菌することで安全に安心して再利用できないか考え、感染性を無くした石膏・埋没材を肥料としてリサイクルすることを考え、実際に作物を育てることに成功しました。また、それ以外のリサイクル用途についても考えました。
この取り組みを通して、歯科分野発のECO対策として歯科医療廃棄物のリサイクルがより発展するよう貢献していきたいです。
一般に悪性腫瘍治療法に於いて三者併用療法が行われているが、機能・解剖学的に複雑な口腔癌治療法ではまだ治療法は確立されているとは言い難い。初期膀胱癌治療法としてBCG菌膀胱内腔療法は確立されているが、治療期間・用量投与方法などは確立されていると云い難い。BCG菌療法が口腔癌治療にも有効であれば、外科切除無に治癒できる可能性があり解剖機能学的に複雑な口腔癌治療患者のQOLも上がる。口腔癌治療にも応用できるか否かを検討するためにHeLa細胞を使用してBCG菌の殺細胞作用機序を調べた。
BCG生菌は、死菌およびその分画抽出精製成分よりも殺細胞効果があり、いずれの実験群も早期に細胞内に取り込まれていた。免疫電顕ではBCG生菌にのみ細胞壁外側に分泌蛋白が見られた。BCG菌は宿主内在化また感染しないと殺細胞効果は惹起されずBCG生菌と死菌の殺細胞効果の差はBCG分泌蛋白質の有無に起因すると思われた。BCG菌癌免疫療法では遠隔臓器転移症例治療応用報告や内在化された分泌蛋白と細胞反応で細胞は早期に壊死を引き起こすので、有効なDDS(Drug Delivery System)併用下でのBCG菌由来制癌剤の可能性を示唆した。
チタン製インプラントの表面は疎水性であり、細胞の付着や増殖に適した表面ではない。そこで、チェアーサイドでチタン製インプラントの表面を親水性化し、細胞適合性を向上する簡便な表面処理法を検討した。純チタン試料の表面処理法として、溶液への浸漬処理:(1)5%次亜塩素酸溶液(1日)、(2)クロム混酸液(1日)、(3)蒸留水(1日)、(4)加熱処理(500℃、5分)、(5)紫外線照射(3日)を検討した。試料表面のぬれ性は、10μlの水を試料の表面に滴下し、接触角を測定することによって評価した。初期付着細胞数は、各チタン試料にヒト骨髄間葉系幹細胞を播種し、4時間培養後に付着した細胞を血球計算板で計測して求めた。各表面処理によって、接触角は研磨面で得られた71.4°から13.4°?3.3°まで低下し、表面は親水性化した。親水性を示した試料の付着細胞数は、紫外線照射した試料を除いて、研磨した試料と比較して50%?100%増加することが分った。本研究の結果から、これらの特殊な機器を必要としない簡単な表面処理によって、チタン製インプラントの表面をチェアーサイドで生体機能化できる可能性が示唆された。
喫煙が口腔に及ぼす影響の一つとして味覚機能の低下が挙げられるが、その機序については明らかになっていない。もしタバコに含まれる何らかの物質が舌粘膜と味蕾を覆うことにより味覚機能が低下しているのであれば、舌清掃によって味覚機能が改善する可能性がある。そこで、本研究では喫煙者が舌清掃を行うことで味覚機能にどのような変化が生じるかを調べることを目的とした。
喫煙者29名を対照群と介入群に分け、介入群に対して2週間の舌清掃を行った。味覚機能の測定にはテーストディスク法を用いた。介入前後を比較した結果、介入群の鼓索神経領域における塩味閾値が有意に改善した。また、鼓索神経領域における苦味において1日あたりの喫煙本数と味覚機能の改善に有意な正の相関が認められた。さらに、味覚閾値の改善と舌苔の付着量にも有意な正の相関があった。一方対照群では味覚機能の変化は認められなかった。
以上より、舌清掃によって喫煙者の味覚が改善されることが明らかになり、何らかの物質による舌粘膜と味蕾の被覆が喫煙者における味覚機能低下の一因である可能性が示唆された。今後、喫煙者には舌ブラシによる舌清掃を勧めることが有用であると考えられる。
口臭は、口腔内細菌由来の硫化物によって引き起こされ、他人との接触時に問題となる。口臭は歯肉縁下や舌背の微生物の除去により減少するが、完全に除去することは難しい。本研究では、飲み物等の簡便に口臭抑制に応用できるものを検索することを目的とし、お茶を中心に解析を行った。
Porphyromonas gingivalis を嫌気条件下で2日間培養した。菌液400μlを1000μlの水、紅茶、緑茶または牛乳と混合し、チューブの中の気体中に含まれる硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドを口臭測定器により計測した。
P. gingivalis由来の硫化水素 濃度は平均1.44 ng/mlであり、緑茶による抑制作用は有意であった。メチルメルカプタンは平均 4.26 ng/mlで、どの飲み物においても抑制は認められなかった。ジメチルサルファイドは、平均0.321 ng/mlで、緑茶で有意に低下が認められた。これらの結果から、緑茶はその硫化水素とジメチルサルファイドの抑制作用から、口臭を抑制への応用の可能性を持つ飲料であるといえる。
近年、健康な歯を一層美しくする歯の漂白への関心は高く、その需要は著しく増加している。ところが漂白後に色調不調和によりレジンを再修復する場合があり、漂白による残留フリーラジカルがレジンの接着性を阻害するという問題がある。本研究ではこの点について改善策を含め検討した。
アクリルレジンにて包埋されたヒト抜去中切歯の歯冠部に#800仕上げのエナメル質平坦面を調製し、22.5%または35%の濃度の過酸化物を含有する漂白材で漂白した。1日間あるいは3日間生理食塩水中に保管した後、または漂白後直ちに10%アスコルビン酸水溶液あるいはスルフィン酸ナトリウムを含有する市販の薬剤で還元処理を行なった後、プライミング・ボンディングシステムで接着処理を施しコンポジットレジンを填塞し、圧縮剪断試験を行った。
漂白後のエナメル質に対するレジンの接着性は過酸化物の濃度に依存して低下した。これらへの対応策として、漂白後1日間以上経過すると過酸化物の濃度にかかわらずレジンの接着性が回復するので、レジン修復は漂白1日以降に行なうことが勧められる。また、漂白後ただちに還元処理を行なうことも接着性が回復するには有効であった。
口腔乾燥状態は、口臭、齲蝕多発、口腔粘膜及び歯周組織の炎症などの発症のリスクを高める可能性がある。老化に伴い口腔乾燥状態が生じる報告はあるが、若年者の口腔乾燥の実態に関する報告はまだない。また口腔乾燥状態がストレスや口腔内常在菌叢にどのような影響を及ぼすかも具体的に示されていない。そこで若年者における口腔の乾燥状態と常在菌叢との関連性について検討した。
被験者の唾液分泌速度を測定し、High、Normal、Lowの3群に分類した結果、軽度の口腔乾燥状態を示す若年者が約4割認められ、これらの群間を比較すると偏性嫌気性菌数において有意差がみられるものも存在した。また、唾液のアミラーゼ活性とカンジダ菌数及びレンサ球菌比率との間にも、各々相関がみられた。ゆえに、口腔乾燥状態が唾液内常在菌叢に変化を与えることが示唆された。
口腔乾燥状態と唾液アミラーゼ活性の間に明確な相関関係は認められなかったが、ストレスの指標には、唾液中ステロイドホルモン量なども関与するので、更に多角的に検討する必要がある。
細菌エンベロープに存在する表層リポタンパク質は様々な病原性への関与が示唆されている。近年、う蝕原性細菌Streptococcus mutansのゲノムデータ解析によって、約30種類の推定リポタンパク質の存在が示唆されたが、それらの機能はほとんど解析されていない。また、それらリポタンパク質と2つの修飾酵素LgtおよびLspAの関係も解明されていない。
今回、我々はS. mutansのゲノムデータベースからう蝕原性への関与が考えられる推定リポタンパク質OpcCを見出した。そこで、S. mutans 109c株(野生株)のOpcC欠損株を作製し、野生株のう蝕原性能(バイオフィルム形成能、耐酸性能)と比較した。その結果、OpcCは耐酸性への関与を示したが、バイオフィルムの形成には関与していなかった。そこで酸刺激時のopcC遺伝子の発現誘導を調べた結果、無刺激時と比較して有意に上昇していた。一方、細胞表層のOpcCはLgtの欠損で完全に消失し、さらに耐酸性能はLgtおよびLspAの欠損株でも消失していた。以上の結果、S. mutansは外界の酸刺激により、リポタンパク質OpcCの発現を調節することで耐酸性能を獲得していることが示唆された。さらにLgtとLspAによるOpcCの成熟は耐酸性能の発揮に必須であることが示唆された。
今日、私は日本における歯科医療チームスタッフの社会的地位は低過ぎるのではないかと感じていた。歯科医師、コデンタルスタッフの社会的地位はどのように認識されているのかを知るため、歯学部歯学科、歯科衛生士養成過程を含む四年制大学、歯科技工士専門学校、医学部看護学科、歯科衛生士専門学校の学生に対してアンケートを行った。
将来その職業に就くことに満足であるかという問いに対して、四年制大学学生では「いいえ」の回答が54%とほかの学科に比べ著しく高く、職業希望の動機についても、他の学科では「仕事にやりがいがある」という理由が最も多かったのに対し、その他の回答が半分以上で、内容も前向きではない回答が多かった。
今回の結果では、歯科医師に関しては社会的地位が低いとは言えないが、歯科衛生士、歯科技工士について、現状の地位に満足していない状態であった。また、歯科衛生士養成課程を含む四年制大学の学生のモチベーションの低さが目立った。歯科衛生士専門学校ではこのような結果は見られなかったため、四年制大学になったことも、原因として考えられる。
多形腺腫(PA)と腺様嚢胞癌(ACC)は、介在部導管の管腔上皮と筋上皮を発生母組織とする唾液腺腫瘍である。しかし、PAで軟骨形成が観察されるが、ACCではみられない。PAにおける腫瘍性筋上皮細胞、酸性粘液多糖、コンドロモジュリンI(ChM-I)の存在が軟骨様組織の形成に関与すると考えられる。ACCでもPAと同様にこれらの因子が存在していれば、軟骨様の組織を形成する可能性がある。
検索には、著明な変化のない顎下腺組織を対照群とした。実験材料には、軟骨形成を伴うPAと篩状構造を持つACCを用いた。これらの試料はHE染色、トルイジンブルー染色および一次抗体にS100タンパク(S100)とChM-Iを用いた免疫染色を行なった。
PAの軟骨様組織や粘液腫様組織はメタクロマジーを示し、腫瘍細胞はS100とChM-Iのいずれにも陽性であった。ACCの偽腺腔内に存在する粘液や腫瘍間質の一部はメタクロマジーを示したが、この部分にはS100とChM-Iは陰性だった。
偽腺腔や間質に粘液基質は存在するが、同部に腫瘍性筋上皮細胞とChM-Iが局在しなかった。これらがACCで軟骨様組織が形成されない理由と考えられた。
【目的】CXCL10は歯周炎の病態に関与しているTh1細胞の浸潤に関与するサイトカインである。Oncostatin M (OSM)は炎症性サイトカインであり、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)のCXCL10産生を誘導することが報告されている。テアフラビンは紅茶ポリフェノールであり、様々な生理作用を有していることが報告されている。しかし、テアフラビンがHGFに与える影響については不明な点が多い。そこで、我々はテアフラビンがOSM誘導CXCL10産生に与える影響について検討した。
【材料および方法】HGFは健常歯肉組織より得た。HGFのCXCL10産生はELISA法にて、CXCL10産生に関与しているとされるp38 MAPK、JNK、Akt、STAT3のリン酸化についてはwestern blot法を用い解析した。
【結果および考察】テアフラビンはHGFのJNKおよびAktのリン酸化を抑制することにより、OSM誘導CXCL10産生を減少させることが明らかとなった。CXCL10はTh1細胞浸潤を誘導し、Th1細胞が歯周組織破壊に関与していることより、テアフラビンを歯周炎治療に用いることができる可能性が示された。
歯周病原性細菌は、宿主細胞の炎症性サイトカイン産生を誘導することによって歯周病を引き起こす。一方、amphotericin B は抗真菌薬であり、カンジダ症の治療薬として広く用いられているが、近年、歯周病治療薬としても使用され始めている。しかしながら、 amphotericin B はin vitro で炎症性サイトカインの産生を惹起することが報告されている。そこで、歯周病患者由来のヒト歯肉線維芽細胞を用いて、グラム陰性菌の細胞壁に存在するLPSの活性の中心であるlipid Aによる炎症性サイトカインの産生に対してamphotericin Bが与える効果について検討した。
その結果、amphotericin B 単独では、ヒト歯肉線維芽細胞のIL-6とIL-8産生誘導はわずかであったが、amphotericin B はlipid Aによるヒト歯肉線維芽細胞のIL-6とIL-8の産生を相乗的に誘導した。MCP-1産生では amphotericin B による産生増加はみられなかった。以上の結果は、プラークコントロールを行っていない患者に amphotericin B を歯周病治療薬として用いると、ヒト歯肉線維芽細胞の相乗的なIL-6とIL-8の産生が起きて炎症が増悪する可能性があることを示唆する。
高齢化社会を迎え、中枢性疾患の罹患者が増加することが予想される。それゆえ、中枢疾患発症の予防は重要である。一般的にリンゴを含む果物や野菜の摂取が中枢性疾患に効果があると言われるので、今回、モデルとして卵巣摘出(OVX)マウスを使用し、日常的リンゴの摂取が記憶や情動に与える影響とその作用物質を薬理学的および行動学的手法により比較検討するため、高架十時迷路(EPM)等、認知や情動の検討を行う試験を実施した。
リンゴの摂取はOVXマウスのEPMにおけるオープンアームの滞在時間(OAT)を減少させた。リンゴに含まれるフラボノイドであるケルセチン投与は、リンゴと同様の結果を示した。ケルセチンはエストロゲン様作用があることから17α?estradiol, 17β?estradiolを検討した結果、これらの投与は、ケルセチンと同様、OATを減少した。さらに、それらの作用はGABA受容体アゴニストであるジアゼパムにより抑制された。
結論:リンゴ摂取はOVXマウスの情動乱れの是正に効果があり、その主作用物質と考えられる、ケルセチンは、エストロゲン様作用とGABA受容体と関連する可能性がある。
N-methyl-D-aspartate受容体(NMDAR)のサブユニットの1つであるNR3Bは、NMDARの興奮性を低下させるという特性が知られている。しかしながら、疼痛制御との関連は未だ報告はない。本研究では、糖尿病性疼痛モデルマウス(Db;全身的な疼痛を伴う)と坐骨神経部分結紮モデルマウス(PNL;局所的な疼痛を伴う)を作製して、神経障害性疼痛時におけるNMDARの機能変化やサブユニット構成変化を検討した。
先ずNMDARの機能変化を調べるため、NMDA投与で誘発されるマウスの特異的行動を観察した。この特異的行動の回数は、PNLとDbの両群で対照群に比べて減少しており、両疼痛モデルでのNMDAR機能の低下が示唆された。次に、NR3Bの発現量をウエスタンブロッド法で解析した結果、Db群大脳皮質においてのみNR3B発現量が対照群に比べて有意に増加する事が分かった。さらに、この発現増強は、鎮痛薬で疼痛を抑制すると対照群レベルにまで減少した。
以上より、生体には、疼痛知覚の認知回避のために、NMDA受容体を介した防衛的な疼痛制御機構がそなわっている事が明らかとなった。
口腔内マクロファージは、細菌貪食能を有する傍ら、リポ多糖(LPS)の刺激により活性化され、口内炎の誘発に関与する。加齢や歯周病の重症化に伴う唾液中アミノ酸濃度の変動が報告されているが、その供給源は不明である。また、活性化マクロファージあるいは破骨細胞におけるアミノ酸代謝の報告は少ない。今回、マウスマクロファージ様細胞株(RAW264.7, J774.1)を用いて、LPS刺激後のアミノ酸代謝の変動を検討した。細胞は、10%非動化牛胎仔血清を含むDMEM培地中で培養した。NOは、Griess法により、アミノ酸は、アミノ酸分析機により定量した。マクロファージの活性化に伴い、NO、シトルリン、そしてグリシンの産生量が顕著に増大した。この結果は、高齢者・歯周病患者の唾液中にグリシン濃度が高い報告と一致し、グリシンの加齢や歯周病発症への関与が示唆された。活性化マクロファージにおいてセリンの消費量が、グルタミンの消費量を上回ることが判明した。セリンは、活性化マクロファージの生存に必須である可能性が示唆された。破骨細胞におけるこれらアミノ酸の代謝は、今後の検討課題である。
癌の転移制御は原発病巣の制御よりも困難であり、治療上の最大の問題点である。
癌転移抑制遺伝子CD82/KAI-1は患者の良好な予後と相関するが、その機能は明らかでない。CD82の機能を解析し、転移抑制治療が開発できないだろうか。本研究では癌細胞の原発巣からの離脱に注目し、癌細胞の細胞間接着におけるCD82の機能解析を行い癌転移抑制療法への可能性を探った。
in vitro浸潤モデルおよび細胞凝集能の検討により、CD82は癌細胞のE-cadherinを介した細胞間接着の増強と、細胞運動抑制により原発巣からの離脱を抑制することが明らかとなった。さらにCD82はE-cadherinの細胞膜上での安定化に関わるE-cadherin/β-catenin複合体を安定化させていた。
以上のことよりCD82は癌細胞のE-cadherin/β-catenin複合体を安定化させることにより癌細胞間接着を亢進させ、原発巣からの離脱を抑制し、転移を抑制することが示唆された。さらに動物実験の結果からもCD82が癌の転移抑制治療に応用できる可能性が示唆された。
近年、口腔乾燥症と診断される患者が増加しており、これらの患者の多くは、唾液分泌低下傾向にある。唾液の分泌速度が味覚の刺激の種類によって変化する。味覚物質による唾液分泌速度の変化を研究することは、オーラルケア商品の開発に役立つと考えられる。
ミラクリンは酸味物質の刺激によって引き起こされた味覚反応を変化させ、ギムネマ酸は甘味刺激による甘味感覚を抑制する働きがある。本研究の目的は、酸味刺激や甘味刺激による唾液分泌反応が、ミラクリンやギムネマ酸によってどのように変化するかを調べることである。
ミラクリンの前処理により、被験者はクエン酸による甘味を感じたが、クエン酸刺激による唾液分泌はスクロース刺激によるそれと同じような経時的変化を示さなかった。ギムネマ酸の前処理を伴うスクロース刺激実験では、唾液分泌に影響がなかった。キムネマ酸とミラクリンで前処理をし、クエン酸刺激を行った場合は、酸味を強く感じるが甘味をあまり感じず、唾液分泌速度は増加する傾向を示した。
以上より、味覚刺激によって誘発された唾液分泌は味質によって修飾されること、味覚刺激の持続性に依存することが示唆された。
現在市販されている歯垢染色液は、口腔内を非特異的に着色しているので、プラークを染めるという意味では非常に精度が低い。我々はプラークを特異的に染め出すことができる染色液の開発を試みた。そして、Avidin-Horseradish Peroxidase Conjugate (Avidin-HRP)が生菌に結合することを見出した。そこで、Avidin-HRPの生菌認識について検討したので報告する。
大腸菌および、S.サリバリウスをAvidin-HRPとインキュベートし可溶性合成基質(TMB)により発色、吸光度を測定した。その結果、Avidin-HRPは大腸菌とS.サリバリウスは顕著な親和性を示した。 さらに、唾液ムチンでコーティングしたヒドロキシアパタイト結晶プレート上で上記細菌を培養し付着させ、Avidin-HRPとインキュベートし沈着性合成基質(DAB)により発色させ、実体顕微鏡で観察したところ、細菌はDABにより染色された。ここから、Avidinは大腸菌やS.サリバリウスに対して親和性を示した。
現在、Avidin-HRPのグラム陰性菌成分リポ多糖への結合と、実際にヒト口腔内でインキュベートしたヒドロキシアパタイト結晶プレート上プラークへの結合を検討している。
原田 自由里
2010年8月20日(金)に,歯科医師会館に於いて
平成22年度(第16回)日本歯科医師会/デンツプライ スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラムが行われました。
今年度は22校の参加があり,以下4名が上位入賞されました。
優勝/日本代表 – 臨床部門 第1位:岸田 瑠加さん,大阪歯科大学 5年生
う蝕予防を目的としたまんじゅうの製作と研究
準優勝 – 基礎部門 第1位:本郷 裕美さん,北海道大学歯学部 6年生
歯根膜に対するペリオスチンの作用における組織化学的所見
臨床部門 第2位:景山 靖子さん,日本大学歯学部 5年生
グルテンガムを用いた局所薬物配送システムの確立を目指した研究
基礎部門 第2位:櫨原 由理さん,岡山大学歯学部 4年生
チオペンタール麻酔作用のマウス週齢差におけるGABAトランスポーターの関与
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