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2008 年 8 月 のアーカイブ

第14回大会

2008 年 8 月 20 日 コメントはありません

第14回大会 2008年(平成20年)8月20日 参加校 18校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:會田 悦子, 日本大学松戸歯学部, 5年生

携帯電話とパソコンを利用したブラッシング効果の検討

ブラッシングはプラークを除去し、齲蝕を予防するのみではなく、歯肉に対するマッサージ効果もあり、結果として、歯周疾患を予防し、口臭をも防ぐ。現在、学校歯科健診ではGO、COという概念を導入している。これは子ども達が口腔への関心を深めることによって食習慣ならびに生活習慣を改善して「生きる力」を育むことの動機づけとしている。
日常のブラッシングで、プラークが除去されているかどうかを判断することは難しい。プラークの除去効果を自分自身で簡単に確認でき、そのデータを保管し、経時的に比較することができれば、効果的なブラッシング方法をマスターするだけでなく、歯・歯肉の状態を客観的に評価できると考えられる。
そこで演者はブラッシングの効果を自分自身で、簡単に評価することを目的として、ほとんどの国民が持っているカメラ付き携帯電話を利用することを考え、実験を行った。
その結果、プラークの除去状態を経時的に比較していく事は、明らかにプラークの除去効果を上げることが分かった。

準優勝:眞島 いづみ, 北海道医療大学歯学部, 5年生

天然精油によるデンタルユニット洗浄システムの開発

歯科治療では観血的な処置が多く、感染制御は重大な問題の1つである。診療において歯科医師は滅菌グローブを装着し、滅菌された器具を使用しているが、我々は歯科治療において頻繁に使用する水が滅菌されていないことに気が付き、また実際にデンタルユニットの給水系が細菌に汚染されている事実を知った。そこで我々は複雑なユニットの給水系を一般歯科医院で簡便に清掃することができる”天然精油によるデンタルユニット洗浄システムの開発”を試みた。
我々は農薬散布用手動式ポンプの排水パイプ系を改修し、システムAを独自に開発した。更に、システムAの複雑な接続や操作性を改善するために、ユニットへの空気圧の供給系を利用する全自動式のシステムBも開発した。洗浄液は天然精油であるTea Tree Oil (TTO) をTween20で可溶化し、0.7%TTOに調整した。両システムを用いてユニットの洗浄を行った結果、ユニットの給水系内の細菌生存率は洗浄前と比較すると激減していた。よって我々の開発した洗浄システムは細菌によって汚染された給水系を容易に清掃することができ、水からの感染回避と歯科治療の質の向上に極めて役立つと考えられる。

第三位:山崎 加惠, 東京歯科大学, 5年生

高齢者における誤嚥性肺炎予防のための口腔衛生評価法の開発

誤嚥性肺炎は、高齢者における死因の上位を占めており、その罹患によって高齢者のActivity of Daily Living (ADL)の低下を引き起こすと考えられる。専門的口腔ケアは、唾液中の総生菌数を減らし、肺炎様の特発性の発熱頻度も減らし、肺炎の予防に有効であると報告されている。
しかし、実際の介護の現場で口腔ケアにあたる介護者は、多くの場合が歯科の専門家ではなく、そのman powerにも限りがあるため、効率的な口腔ケアを提供していくためにはシンプルで科学的、かつ口腔内細菌の量的な評価法が必要不可欠である。
本研究では、54人の高齢者と43名のボランティアから得た唾液で実験を行った。唾液中の総菌数とレサズリン還元反応は相関を示し、還元反応によるレサズリン色素の減少と唾液中の総生菌数は相関を示した。これらの結果から、レサズリン色素の減少による比色定量による評価法を開発した。こうした評価基準に基づいた効率的な口腔ケアの応用が、高齢者における誤嚥性肺炎の予防、ADLの向上に貢献することが望まれる。

石附 法子, 岩手医科大学歯学部, 6年生

エナメル質酸蝕症の抑制に関するin vitro研究

酸蝕症は非細菌性の酸侵襲で生じる歯面の溶解で、齲蝕の減少にともない最近注目されている。本研究では、酸性溶液へのミネラルまたはフッ化物添加の効果を、歯質の蛍光減少率により検討した。材料には牛歯エナメル質(n=6/群)を用い、15分間の0.1%クエン酸(pH 2.74)処理を酸蝕症モデルとした。実験1:試料をCa、フッ化物または緩衝剤の有無別に0.1%クエン酸または市販飲料に37℃で15分間浸漬した。実験2:試料をヒト唾液に37℃で2時間浸漬してペリクルを形成、Ca添加の有無別に0.1%クエン酸を37℃で15分間作用させた。実験3:試料を37℃で15分間0.1%クエン酸により処理、ついで唾液に37℃で24時間浸漬した。最終的に、全試料について健全部に対する相対的な蛍光減少率(ΔF、%)を測定した。実験1では、市販飲料群を除くすべての実験群で対照群よりも有意に低いΔF値を認め(p<0.05)、酸蝕の抑制を示した。実験2および3では、処理群の間でΔF値に有意差は認められなかった。以上より、Caおよびフッ化物は酸性飲料と同時に作用することによりエナメル質の酸蝕症を抑制することが示唆された。

井戸垣 潤, 大阪歯科大学, 4年生

レーザーポインターを用いた補助具の開発 -インプラント植立評価装置への応用-

治療技術の急速な進歩と高齢化社会の到来があいまって、歯科インプラント治療は急速に普及してきた。インプラント治療では、植立したインプラントにアバットメントおよび最終補綴物を被せる時期を客観的に評価できることが、治療経過の正確な把握と予後の向上に重要である。非破壊で精密測定できる方法として考案されたインプラント植立評価装置を用いてインプラント動揺度を測定したところ、再現性のある測定が困難だった。そこで、測定プローブと平行にレーザーを照射し、プローブと照射点との距離を一定にすることで、測定間誤差を減少させられるのではないかと考え、市販されているレーザーポインターを測定プローブに装着する補助具を新たに開発・製作し、測定の再現性を評価する試験をおこなった。その結果、補助具の装着で測定値のばらつきが著しく改善された。
本研究により、補助具によってレーザーを指標とすることがインプラント植立評価測定の再現性向上に有効である可能性が示唆された。今後、測定プローブと補助具の小型化・軽量化を図ることで、チェアーサイドで誰でも精度の高いインプラントの客観的な機能評価が行えるようになると考えられる。

岩崎 亮也, 大阪大学歯学部, 4年生

マイクロチャンバーを用いた細胞スフェロイド形成技術の開発

細胞スフェロイドは生物研究を目的とした異種細胞層構造の構築や組織工学研究における細胞送達手段、細胞の局在化にも有効である。しかし、従来の細胞スフェロイドの作製には、操作が煩雑、作製スフェロイドサイズの制御や含有する細胞数の制御が困難、作製に長時間を要する、など多くの問題がある。そこで、本研究では、ソフトリソグラフィーにより作製したマイクロパターンディッシュを利用し、簡便かつ大量に均一な細胞スフェロイドを作製できる技術の確立を目指した。マイクロパターンディッシュ上での単純な細胞培養(骨髄間葉系細胞)では不均一な細胞凝集塊が形成された。PEGやサイトカラシンDといった薬剤を添加した培養により、不均一な細胞凝集塊形成は抑制されたが、細胞スフェロイドの形成も阻害された。そこで、培養2日目におけるサイトカラシンDの除去の結果、各チャンバー内で均一なスフェロイドを形成することに成功した。薄切切片の蛍光免疫染色の結果、このスフェロイド形成において細胞間接着が有意に関与していることが分かった。本細胞スフェロイドのサイズや細胞含有数はチャンバーサイズによって制御可能である。また、タンパク質分解酵素を用いなくても、簡単なピペッティングでディッシュからの回収が可能である。今回開発した手法は多くの研究に応用可能な基盤技術となりうる。

大槻 有美, 徳島大学歯学部, 4年生

ヒト上皮細胞の抗菌ペプチド発現に及ぼすスダチチンの影響

高齢者のQOLを維持するため、歯の喪失の主要原因となる歯周病の予防法の開発は重要である。「すだち」の抽出成分スダチチンはMRSAやH. pyloriに対し抗菌作用を有することや、う蝕原因菌であるS.mutans菌およびS.sobrinus菌の歯面への付着抑制作用を有することが知られている。一方、抗菌ペプチドは皮膚や粘膜の上皮細胞より産生され、生体のもつ自然免疫機能の維持に重要な役割を果たしている。生体抗菌ペプチドの一つであるカルプロテクチンはP. gingivalisの上皮細胞への付着を低下し増殖を抑制することが知られている。そこで本研究では、スダチチンが抗菌ペプチドに及ぼす影響について検討を行った。ヒト口腔粘膜上皮細胞株TR146にスダチチンを添加し、24あるいは48時間培養後、全RNAを抽出し、抗菌ペプチドのmRNA発現をNorthern blot法およびRT-PCR法にて調べた。その結果、低濃度のスダチチンで数種の抗菌ペプチドの発現上昇が認められた。以上より、スダチチンは歯周組織の感染予防に有用であり、歯周病予防に応用できる可能性が示唆された。

翁長 美弥, 鶴見大学歯学部, 5年生

光触媒剤二酸化チタン (TiO2) を添加した歯の漂白剤について – 塗布法と照射光の違いが漂白効果に及ぼす影響 –

低濃度の過酸化水素水に、光触媒剤二酸化チタン (TiO2) を添加した漂白剤の漂白効果が、漂白剤の塗布条件と光照射を変えた時に、どのような漂白効果を示すかについて評価した。漂白剤には、使用時の過酸化水素濃度3.5% を使用した。これは、一般に歯科医院で使われる漂白剤濃度の約10分の1である。漂白効果の判定には、ヘマトポルフィリン染色試験紙を用いた。漂白剤の塗布を、製造者指示通り、または製造者と異なる変法で行った場合、また、光照射を460 nm 付近に単独のピーク波長を有するLED と、460 nm と410 nm 付近に二つのピーク波長を有するものについて、漂白効果の違いを評価した。測色は分光式色差計により行い、測定されたL*、a*、b* の値から、色差(ΔE*ab) を算出し、それぞれの条件で得られた色差の平均値と標準偏差を統計的に処理した。結果は、安全性を最優先に設計された、「低濃度の過酸化水素水に光触媒剤である二酸化チタン (TiO2) を添加した漂白剤」 は、製造者指示通りの使用では、漂白効果が緩慢であるが、塗布方法と光照射に工夫すると、高い漂白効果が得られることを示していた。

北島 大朗, 日本大学歯学部, 5年生

超音波エコーによる非破壊的な象牙質厚さの測定

支台歯形成や窩洞形成中の偶発的な露髄は、一般臨床において比較的高い頻度で遭遇する偶発症である。そこで我々は、臨床で簡便かつ非破壊的に正確な象牙質厚さを計測する方法について検討することを企図し、一般工業界で頻用されている超音波エコーを用いた非破壊検査法に着目して、本法を象牙質厚さ測定に応用することを試みた。
本研究では、超音波エコー測定器と牛歯象牙質を用いて、その測定精度と臨床応用の可能性について検討した。規定の厚さに調節した象牙質試験片を製作し、超音波エコーを用いて象牙質厚さを200回ずつ測定した。その結果、測定値の平均値は、規定厚さ1.0㎜、1.5㎜、2.0㎜、2.5㎜、3.0㎜の象牙質試験片で、各々1.1±0.11㎜、1.7±0.09㎜、2.0±0.11㎜、2.5±0.12㎜、2.9±0.19㎜であった。このことから、超音波エコーにより象牙質厚みの測定が可能であることが明らかとなり、本法は臨床上有用性の高い診査法になり得ることが示唆された。

河野 茜, 日本歯科大学新潟生命歯学部, 3年生

銀コロイドを用いた災害時に応用できる新しい消毒法の開発

最近地震や災害のニュースを聞くことが多い。私たちが数年後歯科医師になることを考えると、このような災害時に何ができるかを考えた。そのひとつとして、悪化する衛生状態を防ぐためにも簡便な消毒薬が必要であると考えた。現時点における消毒には火、多量の水や薬剤を使用する。しかし、災害時では水などの物資が制限されるため、このような消毒法は適切でない。そこで、災害時の物資の少ない状態でより効率のよい消毒法として現在人体に安全な消毒薬として使用されている銀コロイドに注目した。
まず、最初の段階として今回は銀コロイドの殺菌効果について検討した。LB液体培地6ml中に銀コロイドを0.01、0.1、1、10ppm添加して大腸菌を37℃、5時間振とう培養し、濁度(560nm吸光度)を測定した。さらにこれらの測定値から銀コロイドの大腸菌に対する50%発育阻止濃度を求めた。
この実験から殺菌効果は、ある濃度でいきなり大きくなり、その濃度は大腸菌量により異なる。また、大腸菌の量に反比例して小さくなるということが分かった。
これからは、この結果をふまえた上で、コロイドの性質を生かした消毒法を開発していきたい。

小西 宏和, 朝日大学歯学部, 5年生

喉頭蓋谷に残留する食物のビデオ嚥下造影所見 -人工舌モデルを用いた検討-

嚥下障害患者のビデオ嚥下造影検査 (VFSS)で認められる舌根部や喉頭蓋谷への食塊の残留は、誤嚥の危険性を示す重要な所見のひとつである。
しかし、残留のVFSS所見が、飲食物の種類により、どの様に変化するのかに関する詳細な検討は行われていない。そこで我々は、生体の舌、咽頭および下顎を再現したモデルを作成してシミュレーションVFSSをおこない、口腔咽頭における食塊の動きについて検討した。
その結果、粘度または付着性の大きな食品ほど、舌背斜面をゆっくりと滑落し、喉頭蓋谷に多く残留する事がわかった。粘性の有る食品が、一塊となって舌背斜面を滑落するのに対して、液体は、舌背斜面に拡散して滑落するため、喉頭蓋谷への残留が少なくなっていた。また、側面から撮影したVFSS画像のみからは、左右どちらか片側の喉頭蓋谷へ残留しているのか、両側に残留しているのかの判別が困難である事が示された。口腔咽頭腔に残留する飲食物をVFSSで評価するためには、側面像に加えて正面像による検査が必要と考える。

助川 絵美, 奥羽大学歯学部, 5年生

誰でも検出可能なCandida spp.検出キットの開発

高齢者の口腔ケアにおいてはCandida spp.の数を一定にコントロールする必要がある。実際の口腔ケアにおいては、各種の洗口剤などが使用されている。これらの洗口剤の適切な使用のためにも、Candida spp.の数の変動を把握しておく必要がある。そこで、我々は誰にでも使用できる簡易型のCandida spp.の検出キットの開発を試みたので報告する。滅菌綿棒をヒトの口腔内に軽く挿入して、唾液を含ませる。その綿棒を尖端の尖ったチューブの中に押し込んで、尖端をカバーしているビニールシールを突き破る。その際はあらかじめ、スライドグラスを入れてあるチューブを用意しておく。ビニールシールが突き破られた結果、その穴から生理食塩水がスライドグラスの培地の上に落下していく。その後、スライドグラスの入っているチューブのフタを閉めてから、37℃の培養器に入れる。その結果、37℃で培養1日後にスライドグラス上の培地に多数のコロニーが出現した。高齢者の口腔感染症を考える上で最も重要なCandida spp.を簡単に調べることができて、誰でも使用可能な検出キットを開発することができた。

千原 隆弘, 松本歯科大学, 4年生

受動喫煙ラットを用いた唾液腺細胞への影響の解析

受動喫煙でも口腔内の健康に悪影響を及ぼすことが知られている。本研究は、唾液に着目し、受動喫煙と唾液抗菌タンパク質および唾液量、唾液腺細胞について検討した。
受動喫煙モデルには雄性ラットを用いた。ラットをコントロール群、受動喫煙(passive smoking; PS)群の2群に分け、PS群は屠殺するまで、チャンバー内で1日3回、1回に8分間受動喫煙させた。唾液はPS前(0日後)とPS15日、30日後の刺激時唾液を用い、アミラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性を測定した。 唾液腺はPS31日後に採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。
PS0、15、30日後の唾液量はコントロール群、PS群で差は認められなかった。アミラーゼ活性およびペルオキシダーゼ活性はコントロール群に比べ、PS群でわずかながら減少が見られた。唾液腺の組織学的解析では、PS群は全体的に血管が拡張しており、充血状態であった。
PSは唾液タンパク質に影響を与え、唾液腺においては血管を拡張し、充血状態にさせた。PSは唾液および唾液腺に悪影響を与えて口腔内環境を悪化させると考えられる。

塩生 有希, 新潟大学歯学部, 4年生

プラークコントロールに対する口腔内観察ミラーの効果と患者様の意識変化

歯周病やう蝕の治療は医療者が行なうが、予防、治療の成功率向上や治療後の再発防止のためには、患者様のセルフケアが欠かせない。私達はプラークコントロール・レコード(以下PCR)を測定する相互実習を通して、自分の口腔内をよく観察することが重要であると考えた。そこで、本研究では既成の口腔内観察ミラーを用いることにより、プラークコントロールが改善するかどうかを検証した。その結果ミラー非使用群に比べ、ミラー使用群のほうにPCR値が改善した人数が多かった。このことはプラークコントロールに対する口腔内観察ミラーの有用性を示している。また口腔健康に関する意識と行動の変化をアンケートで調査したところ、意識や行動の変化を見る項目ではPCR測定後の一定期間で両群ともに向上したが、行動に関しては使用群の向上率が高かった。このことから自分の口腔内を知ることにより意識が高まった結果、それが行動に結びつく可能性が示された。今後は口腔内観察ミラーの評価アンケート等に基づき、口腔内観察ミラーを単純小型化し、より簡便に使用することができるようにしたい。このような器具を必要に応じて積極的に使用することは重要だと思われる。

林 富雄, 九州歯科大学, 6年生

口腔粘膜サンプルを用いた遺伝子多型解析

遺伝子解析では血液サンプルからゲノムDNAを抽出する方法が一般的であるが、この方法は患者への侵襲が大きく、一般的な歯科臨床の中では困難と言わざるを得ない。そこで本研究では、口腔内より採取した粘膜細胞からより効率的にゲノムDNAを増幅させ、遺伝子多型の存在を診断するためのシステム構築を目的とした。研究の趣旨の説明に同意が得られた健常者の頬粘膜から、アプリケーターを用いて口腔粘膜細胞を採取し、phi29 DNA polymeraseを用いてゲノムDNAの増幅を行った。その後、PCR法および電気泳動によりIL-1遺伝子発現の検討を行った。その後、制限酵素を利用したRFLP解析により、遺伝子多型の有無を検討した。その結果,、口腔粘膜細胞からゲノムDNAを短時間で効率よく増幅することが可能であり、またIL-1遺伝子の特異的増幅が確認された。さらに制限酵素を用いたRFLP解析を行うことにより、遺伝子多形の解析が可能であった。頬粘膜から粘膜細胞を採取する方法は非侵襲的であり、遺伝子多型の診断を行う上で、十分な量のゲノムDNAを短時間で得られることが示唆された。今後インプラント周囲炎や重度歯周病と遺伝子多形の存在との関連を明らかにする上で、本手法が有用であることが示唆された。

細谷 悠貴, 明海大学歯学部, 4年生

3種類のシーラント材のStreptococcus mutansの定着とバイオフィルム形成に対する細菌学的評価

シーラント材として用いられているBis-GMA系レジンとグラスアイオノマーセメントは、陶材や金属より細菌が付着しやすいことが知られている。本実験では、シーラント材の表面およびエナメル質との接着境界面でのStreptococcus mutans (S. mutans)の定着とバイオフィルム形成について検討した。
シーラント材料は、光重合型レジン(A)、化学重合型グラスアイオノマーセメント(B)、光重合型グラスアイオノマーセメント(C)を用いた。S. mutansはATCC25175を用いた。培養は0.6%蔗糖添加または非添加で行われた。観察には実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた。
本菌の定着とバイオフィルム形成は、Aが一番低く、B、Cの順に高かった。接着境界面への定着は、Aが一番低く、B、Cの順に高かった。S. mutansの定着はシーラント材によって異なることが示唆された。シーラント材を用いたう蝕予防処置では、萌出状況による材料選択、定期的検査そして接着境界面の歯垢除去が重要であると考えた。

堀内 裕子, 昭和大学歯学部, 4年生

エナメル芽細胞に発現する遺伝子の網羅的解析

エナメル芽細胞は分化段階に応じて、種々の基質タンパク質やプロテアーゼを分泌しながらエナメル質を形成するが、それらを制御するメカニズムについては不明な点が多い。我々はマウスエナメル芽細胞の初代培養細胞を用いたDNA microarrayによる遺伝子発現プロファイルの網羅的解析から、エナメル芽細胞の分化制御に関与する遺伝子について検討した。培養エナメル芽細胞は3日後amelogeninを高レベルに発現しているが7日後には減少し、分化の指標であるenamel matrix serine proteinase-1 (EMSP-1)の発現が3日後に比べ亢進した。これらの結果からエナメル芽細胞は、培養経過に伴って分化したと考えられる。DNA microarrayの解析から、培養3日後に発現が低かったsecretort lukocyto potease inhibitor (SLPI)、small proline-rich protein 1a (Sprr1a)、Sprr3、keratinocyte differentiation associatied protein (Kdap)、repetinなど角質細胞の分化に関連する遺伝子群は、7日間培養すると発現が上昇した。一方、Tenascin C(細胞外基質)やPOEM(接着分子)は、培養に伴い発現が低下した。これらの遺伝子は、エナメル芽細胞の分化や機能発現に関与している可能性があり、今後、エナメル質の形成機序を明らかにする上で有用と考えられる。

三浦 健, 鹿児島大学歯学部, 4年生

重合用光照射器の光量斑が光重合型コンポジットレジンの表面硬さに及ぼす影響

歯科用光照射器の照射光特性は、光重合型レジン材料の重合に大きな影響を及ぼすが、照射光の斑による光強度の不均一性とそれが材料に及ぼす影響に関する報告は少なく不明な点が多い。本研究では5種類の歯科用光照射器について、ライトガイド端における光強度分布による光量斑を測定し、これらの光照射器を用いて重合させた光重合型コンポジットレジンの表面硬さに与える影響を検討した。その結果、測定した全ての光照射器の照射光の光量は均一ではなく、最大値の19-80%にとどまった。とくにハロゲンランプやキセノンランプを光源とする光照射器では、著しい光量斑が観察された。また、これらの光照射器によって重合させた光重合型コンポジットレジンの表面硬さ値も均一ではなく、最大値に比べ約半分の硬さ値しか示さない部位もみられた。こうしたことから光照射器からの照射光の光量斑は、材料の機械的性質に大きな影響を及ぼすことが示唆された。材料の部位による性質の不均一性は修復治療の成否にも影響を及ぼす可能性があることから、照射光の光量斑を軽減させる対策が必要と考えられる。

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