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2003 年 8 月 のアーカイブ

第9回大会

2003 年 8 月 27 日 コメントはありません

第9回大会 2003年(平成15年)8月27日 参加校 20校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:角田 衣理加, 鶴見大学歯学部, 6年生

精油の歯周病原性細菌に対する抗菌効果および口臭抑制効果の検討

アロマセラピーで主に使われる精油であるラベンダー、レモン、ペパーミント、ティートゥリー、クローブがもたらすリラックス効果には免疫系の活性化が期待されている。また、近年、精油の抗菌作用も注目され始めている。そこで代表的な歯周病原菌で口臭の原因となるPorphyromonas gingivalisとFusobacterium nucletum に対する精油の抗菌効果を検討するとともに、ブレンド精油がうがい薬として歯周病患者の口臭に有効であるかを調べた。抗菌効果については、被検菌液に各精油を加えたものを嫌気培養後、コロニー形成法および液体希釈法によって判定した。その結果、5種類全ての精油は 0.28~2.71%(MIC)でFn、Pgの発育を阻止し、1.92~5%(MBC)の濃度で殺菌することがわかった。口臭測定は歯周病患者からインフォームド・コンセントを得た後、水および精油混合水(ぺパーミント、ティートゥリー、レモンの各0.1%水)によるうがいの前後に3タイプの硫化水素 H2S、CH3SH、(CH3)2Sを測定し口臭を判定した結果、精油混合水によるうがい後は口臭の低下が見られた。精油は各々異なる作用を持つので複数のブレンドにより幅広い症状への対応ができ、患者の好ましい香りで高い効果が期待できる。今後、ブレンド精油が歯周病患者の口臭抑制だけでなく、治療効果が期待できるか検討する予定である。

準優勝:齊藤 邦子, 日本大学歯学部, 5年生

光重合型レジン修復のシェードテイキングを的確に行なうテクニック

アメ光重合型レジンの色調適合性は、とくに修復物の審美性を左右するところから臨床的に重要な位置を占める。本研究の目的は、(1)光重合型レジンの硬化前後およびその後の水中保管における色調および透明性の変化を測定するとともに、(2)自家製シェードガイドを用いることの重要性およびその有効性について検討を加えるものである。 14種類の市販されている光重合型レジンを使用した。これらのレジンペーストについて、照射に先立ち、背景を白色あるいは黒色とした条件で測色を行った。測定後、重合硬化させた試片について再び測色するとともに、経時的に測定を行った。本実験の結果から、全ての製品で硬化前後に色調および透明性が変化し、経時的にもその傾向が認められた。このような色調の変化は、臨床において半透明性材料である光重合型レジンの色調併せを困難にする要因の一つとなるものと考えられた。したがって、このテーブルクリニックで紹介する自家製シェードガイドの製作とその臨床応用は、光重合型レジンの色併せを確実にするものであり、その臨床有用性は高いものと考えられる。

第3位:中村 公彦, 新潟大学歯学部, 5年生

飲み込みやすいってどういうこと? -嚥下しやすい食品開発の第一歩-

食物の飲み込みやすさに影響すると考えられる因子は多いが、必ずしもどのような因子が中心的に飲み込みやすさを支配しているかは明確になっていない。これは食物の飲み込みやすさは客観的に評価することが難しいためである。社会の高齢化による嚥下障害が大きな問題になっていることから、本研究では、嚥下障害がある場合にも食べやすい食品開発への第一歩として、飲み込みやすさを客観的に評価することの可能性を検索した。物性の異なる物質を健常な被験者に嚥下させ、官能評価による飲み込みやすさ(主観的)を調査すると同時に、これを喉頭運動測定装置、筋電図およびビデオ嚥下造影のデータ(客観的)と比較して両者の相関を調べた。その結果、主観的な飲み込みやすさを、舌奥から喉頭蓋への食物の送り込み時間で表すことができる可能性が示唆された。今回の実験により、客観的な嚥下動態と主観的な飲み込みやすさとの接点が確認された意義は非常に大きいと思われる。今後は、嚥下障害のある被験者にもご協力をいただき、同様のアプローチをすることによって、飲み込みやすさの実態をさらに解明し、すべての人に食べる楽しみを提供できる新たな食品開発の第1歩としたい。

足立 憲正, 朝日大学歯学部, 4年生

A-病院に来院した患者、付き添いに対する口臭アンケート調査の統計的評価

社会的に、口臭に対する認識は年々高まってきている。また、A-病院にも口臭を主訴として来院する患者も増加してきている。今回、統計的評価を行うことを目的として、A-病院において口臭を主訴として治療を受けていない患者と付添を対象に、口臭に関するアンケート調査と小型ガスセンサーによる口臭測定を行った。アンケート調査と口臭測定は、平成15年5月10日から7月5日までの、毎週土曜日、午前8時30から午後0時30分まで、A-病院総合受付にて行った。アンケート調査は、年齢、性別、口臭の自覚の有無、喫煙歴などを含む11項目で行った。口臭測定には半導体厚膜(AET)ガスセンサーを用い、使用マニュアルに従い、1人の被検者に対し2回測定を行った。今回の調査および統計的評価で以下のことが判明した。1. 30歳台から50歳台に口臭値の高い人を認めた。2. 口臭測定値と口臭の自覚には相関関係を認めた。3. 喫煙と口臭測定値との間には相関関係を認めなかった。

阿藤 久泰, 明海大学歯学部, 2年生

レーザー照射によるヒト歯肉細胞の増殖と細胞死の誘導

今日、歯科治療におけるEr:YAGレーザーの実用性は高く、特に硬組織や歯肉切除の研究に使用されてきた。しかし、臨床研究に比べてEr:YAGレーザーを用いた基礎的研究は少ない。ヒト歯肉切除の際に、Er:YAGレーザーを用いると傷の治りが早い事に着目し、将来的に歯周炎など、口腔内の炎症への適用の可能性を探る目的で、歯肉細胞に対するレーザー照射の影響を、レーザー出力と照射時間を変えて比較検討した。その結果、低出力においては若干の増殖促進効果が見られた。高出力照射の場合は、短時間照射の同様に増殖促進効果がみられたが、照射時間の延長とともに細胞死が誘導された。20 population doubling level (PDL)の細胞まで、レーゼー感受性に差は見られなかった。各実験毎のバラツキは、レーザー照射範囲が狭いために照射を強烈に受けた細胞傷害群と、低レベル照射による増殖促進群の総和の結果であると思われた。PDLの進んだ老化細胞における実験を行うことにより、老化に伴うレーザー感受性の変化に関する研究が推進されるものと考える。

石田 喜和子, 日本大学松戸歯学部, 6年生

電解水のレジン床義歯に対する消臭効果

C義歯が吸湿性に富み、唾液などが付着し、さらにその表面に微生物が定着しやすいことから、義歯による口臭は広く認識されることがらのひとつである。一般的に、口臭の原因物質として揮発性含硫化合物があげられ、それは口腔内に存在する微生物によってタンパク質が分解されてできるものであることが知られている。そこで、義歯に定着する微生物を消失させることにより、口臭を減少させることを試みることにした。揮発性含硫化合物の定量には、Halimeterを用いた。義歯床(10×10×2mm3)をCandida albicans懸濁液中に25℃、48時間浸漬し、次いで強電解質水中に2分間浸漬した場合、明らかな揮発性含硫化合物の減少を認めた。特に塩基性強電解水で1分、次いで酸性強電解水で1分処理した義歯床では最も低い揮発性含硫化合物を確認できた。市販の義歯洗浄液では、作用時間が2分と短かった故か、効果は低かった。義歯床の表面に強電解質水をスプレーした場合、浸漬によるものより効果は劣ったが、揮発性含硫化合物の減少を認めた。スプレー法は、浸漬法に比較して容易であり、場所を選ばないことから、今後検討してみる必要がある。

犬飼 美香, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

無歯顎患者における開口度測定器の開発

歯学の分野では、医学の分野と比較して、データを数字で表し、その値が正常か異常かを見極める指標が少ない。開口度は、口腔機能を評価できる数値化されたデータの一つであり、顎関節症、顔面筋萎縮、強皮症などの、開口障害の指標として大変重要である。開口度は上下顎切歯切縁間の最大可動距離と定義され、下顎の運動域を簡便に評価する指標として用いられてきた。しかし、この指標は一般に前歯部欠?や無歯顎の場合は使えないケースが多い。そこで、本研究では、歯列の欠?形態に関わらず、無歯顎患者でも測定可能であり、簡単に測定できる開口度測定法の開発を目的とした。従来の開口度と相関があると考えられるいくつかの口腔外の測定部位に対して、新たに考案したL字型定規やノギスを使用して測定し、従来の測定値との相関係数を求め、その有用性を検討した。その結果、各々の測定部位で、相関係数0.7以上となり、特に考案したL字型定規は相関係数0.773と最も高く、新たな開口度の指標として十分利用可能であることが示唆された。

小沼 邦葉, 日本歯科大学新潟歯学部, 4年生

痛くない麻酔注射のために ―麻酔薬の温度管理は麻酔時の痛みを軽減するか?―*日本、フィリピン、タイ、U.K.における検討*

局所麻酔時の痛みを少しでも軽減するために独自に注射器を改良し、注射薬の温度管理が痛みにどのように影響するのかを検討した。健常成人ボランティア40 吊を対象に強冷蔵(4~8℃)、冷蔵(10~14℃)、室温保存(18~22℃)、加温器保存(34~38℃)、自己開発したヒーターによる温度管理(38℃)の5群に温度設定したエピネフリン添加2%リドカインの浸潤麻酔を行った。疼痛を表すVAS(Visual analog scale)は、強冷蔵群14.1(±7.4)mm、冷蔵群16.1(±14.4)mm、室温群6.1(±4.4)mm、加温器群9.3(±6.8) mm、ヒーター群1.5(±3.1)mmであり、強冷蔵群、冷蔵群、室温群、加温器群の4群間に有意差は認められなかった。しかしヒーター群においては、他の群と比較し有意に低値であった。よって注射器本体に加温ヒーターを装着し注射薬を投与直前まで温度管理する本方法は、薬液の変性を来さず、局所麻酔時の疼痛を軽減する有効な手段であると考えられた。

小俣 葉, 北海道大学歯学部, 6年生

コーヒー、ウーロン茶、ワインによる修復用レジン表面への色素沈着

本実験では、飲料の違いによる光重合型コンポジットレジンの着色度を比較することを目的とした。レジンを充填したアクリル板を、コーヒー、ウーロン茶、および赤ワイン中に7時間、人工唾液あるいは蒸留水中に17時間のサイクルで浸漬し、1、2、4週間後にデジタルカメラで撮影、画像解析ソフトにてグレースケールに変換した後、イメージングアナライザーを用いて着色度を数値化した。また人工唾液を使用した実験群において、ブラッシングとグルコン酸クロルヘキシジンによる着色除去効果についても検討した。その結果レジンの着色度は蒸留水よりも人工唾液の方が有意に強く現れた(P<0.05)。これは人工唾液に含まれるムチンによりペリクルが形成されたためであると考えられる。また飲料別に見ると、赤ワイン、ウーロン茶、コーヒーの順に着色度が高かった。赤ワインの顕著な着色の原因として、アルコールのレジン浸食作用が考えられる。着色除去効果はブラッシングでは高かったものの、グルコン酸クロルヘキシジンでは何もしない群よりも有意に強く着色した(P<0.05)。これはグルコン酸クロルヘキシジンに着色作用があるためではないかと考えられる。

川崎 美恵, 九州大学歯学部, 5年生

療養型病床における食後性低血圧について

高齢者歯科医療・介護現場において、食というテーマは大きな自立基準となる。各人の全身状態によっては食事環境も異なるため、単に、食べる、ではなく、体温や血圧などの全身状態も考慮しなければならない。急激に血圧が低下すると、死に至る事もあるので注意が必要となる。そこで、食事介護のあり方、特に食後性低血圧の予防に関して、食事の内容・方法との関係において、データの収集および解析を行った。解析はt解析にて行った。食後の血圧低下は食事方法(自立、半介護、全介護)には依存せず、食事の形態(常食、きざみ食、ミキサー食)に依存することが分かった。特に胃ろう群では、顕著な血圧低下が見られた。これは非常に大きな問題である。医療現場では、患者から「ごはんを食べるのがきつい《と聞かれるが、これは食後の血圧低下が一要因であると考えられる。療養型病床では、患者の病症によっては食後性低血圧を考慮して食事方法、食事形態および胃ろう用の食材の滴下時間などを綿密に設定、調整することの重要性が示唆された。

下里 武巳, 岡山大学歯学部, 4年生

アメリカンフットボール選手が望むマウスガードの厚さに関する研究 -声の出しにくさの改善と精神的な安心感とのバランス-

アメリカンフットボールではマウスガード(MG)の使用が公式規則上義務化されており比較的普及しているが、使用時の「声の出しにくさを現状の問題点として訴える選手が最も多い。本研究では、汎用の厚さのMG(3.8mm)に加えて、約1/2の厚さのMG(2.0mm)をそれぞれの選手について作製し、 7日間練習時に使用してもらい、厚さの違いが選手に与える機能的・心理的影響について検討した。その結果、「声の出しにくさ《は、厚さを3.8mmから 2.0mmにすることで改善した。しかし、2.0mmのMGでは使用するにつれ薄すぎると感じる選手が現れ、7日後には2.0mmよりも3.8mmのMG を好む選手が増加した。これは2.0mmのMGでは次第に頼りなさや上安感を感じるようになるためであると考えられる。よって、アメリカンフットボール選手のMGにおいては、上満点としての「声の出しにくさ《を改善するために、安易に2.0mmのMG を作製し、短期間でその効果の評価をするには注意が必要である。選手の使用の経過に伴う変化を考慮し、3.8mmのMGで選手の要望を満たすデザインの工夫等が重要である。

高橋 優, 鹿児島大学歯学部, 4年生

種々の表面処理をした12%AuPdAg合金と硬質レジンとの接着強さ

以下の8種の表面処理をした12%AuPdAg合金と硬質レジンとの接着強さを測定した。アルミナ粉末(100-250μm)によるサンドブラスト、 0.3μmアルミナによる鏡面研磨、鋳造によるリテンションビーズ(209±13μm)、600℃または400℃で1時間の酸化処理、超臨界水(SCW)処理、NaOH、KOH、およびLiOHを用いたアルカリ処理、1% Na2Sを用いた硫化物処理、電気化学的腐食。リテンションビーズを付与した12%AuPdAg合金と種々の硬質レジンとの接着強さは冷熱サイクル試験後も低下は認められなかった。酸化処理はわずかに結合強さが増加したが、SCW処理およびアルカリ処理では有意な効果は認められなかった。硫化処理は無処理のものより、さらに接着強さが低下した。鏡面研磨仕上げの12%AuPdAg合金とレジンとの接着強さは、サンドブラスト仕上げのものより有意に小さい値を示した。これらの結果から、12%AuPdAg合金と硬質レジンとの接着強さを向上させるためには、酸化物、塩化物、硫化物などの機械的強度の劣る被膜が生成しないような表面処理が必要であることが示唆された。

高山 智子, 松本歯科大学, 4年生

糖尿病による唾液分泌障害マウスへの漢方薬の影響

ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病マウスを実験モデルとして、糖尿病による唾液分泌障害に対する白虎加人参湯と五苓散の唾液分泌促進効果を検討することを目的とした。本研究から、実験的糖尿病動物モデルにおける唾液分泌量減少などの唾液腺機能障害が、漢方薬投与によって回復することを確認できた。漢方治療は、古くから、誰もがもともと持っている、病気と闘い、治す力(自然治癒力)を高め、身体を整えることを治療の基本にしているといわれている。これまで、白虎加人参湯は血糖低下作用をもつことが報告されていることから、インスリン上足で引き起こされる代謝障害による高血糖値を調節することによって、唾液分泌機能を改善させたと考えられる。一方、五苓散は生体の水の代謝機能を向上する作用によって、唾液分泌機能を向上させたと考えられた。漢方薬治療が、身体全体の代謝バランスを整えることにより、自分自身のもっている「治す力《を利用する方法であると考えられた。糖尿病に伴う唾液分泌障害による口渇に対して、漢方薬である白虎加人参湯と五苓散が、有効な治療薬となる可能性を示唆できた。

中垣 秀隆, 北海道医療大学歯学部, 5年生

接着性モノマーが脱灰象牙質の再石灰化に及ぼす影響

近年、接着システムは急速な進展を遂げたが、樹脂含浸象牙質と健全象牙質との間に脱灰象牙質が残留することが明らかになっている。この残留脱灰象牙質が加水分解され、樹脂含浸象牙質・健全象牙質間にギャップが形成され(ナノリーケージ)、象牙質接着の長期安定性を低下させることが報告されている。したがってこの残留脱灰象牙質層を如何に早く再石灰化させることができるかが象牙質接着の長期安定性に影響を与える大きなポイントであると考えられる。本研究では、接着システム中に含まれる接着性モノマー、Phenyl-PおよびMDPが脱灰象牙質の再石灰化にどのような影響を及ぼすのかをin vitro石灰化実験系において検討した。その結果、Phenyl-P、MDPともに、酸性条件下では、脱灰象牙質モデルである結合型ホスホホリンの石灰化誘導活性を抑制したが、中性条件下ではそれを増強させた。このことから、現在の接着システムを改良して、石灰化誘導活性を付加した新しい接着システムを開発することにより、接着耐久性を向上させることができるものと考えられた。

信川 真智子, 昭和大学歯学部, 5年生

解熱鎮痛薬(ジクロフェナックナトリウム)は骨吸収抑制効果も示す

本研究では解熱鎮痛薬による骨吸収抑制機序を解明するために代表薬であるジクロフェナックナトリウム(DIC)を使用し、破骨細胞の形成・分化過程に及ぼす影響を検討した。DIC添加群と非添加の対象群を比較した結果、DICは濃度依存的に破骨細胞形成数が低下し、さらに低い濃度で骨吸収も抑制した。また破骨細胞をCSF-1+RANCL添加群、CSF-1+RANCL+DIC添加群に分けて細胞質中のIκBと核蛋白のNF-κBの量をウエスタンブロット法により比較検討した結果、核内でのNF-κB転写活性を直接抑制していることがわかった。以上のことよりDICは破骨細胞に対し、濃度依存的に形成・分化を抑制し、その機序はNF-κB活性の抑制であると考えられた。したがってDICには鎮痛効果以外にも骨吸収抑制効果も示されることから、痛みの消失とともに本薬剤の?用を中止するのではなく、骨量減少が予測されるような症例(歯周病の急性期や抜歯後など)では炎症による骨吸収を防止する目的より長期に?用した方が良いのではないかと考えられた。

坂 江里子, 大阪歯科大学, 3年生

カラーチェンジ自在で接着性を有するエナメル質対応メイクアップツールの開発

本実験では、カラーチェンジ自在で接着性を有するエナメル質対応メイクアップツールの開発を試みた。既存のセルフエッチングプライマー(SPS)に酸化チタン粉末を5%加えた(VICTORIA-1)と1%を加えた(VICTORIA-2)を作成した。また、比較材料として市販商品(CE)を用い、無処理抜去歯牙にこれら材料を塗布し、試料とした。上記試料を硬化後、歯科用色彩計で比色した。また、試料に対し、歯ブラシと超音波スケーラーを作用し、離脱速度を接着性とした。本研究結果において、VICTORIA-1とVICTORIA-2は抜去歯牙を白くさせたが、CEは出来なかった。CEは抜去歯牙からの歯ブラシによるブラッシングで簡単に離脱した。しかし、VICTORIA-1とVICTORIA-2はスケーラーでのみで離脱した。簡単に離脱するということは、CE中の成分が溶出し、口腔内から体内に吸収することが懸念される。一方で、スケーラーの利用で離脱可能であることは、カラーチェンジが自在に行えるということで有意義である。色彩面および接着性の両面から本材料は、エナメル質対応のメイクアップツールとなることが示唆された。

三浦 完菜, 広島大学歯学部, 6年生

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は口腔癌の骨浸潤にも関与している!

癌細胞は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を産生し,血管新生を促進することにより癌の増殖に有利な環境を作りだす。近年、VEGFには血管新生促進作用に加え、破骨細胞の分化や骨吸収活性を刺激する作用があることが明らかにされつつある。一方、癌の骨浸潤は臨床的に大きな問題であるが、骨浸潤機構の詳細は明らかにされていない。そこで、本研究では口腔癌の骨浸潤におけるVEGFの役割を検討するため、歯肉癌27症例におけるVEGFの発現を免疫組織化学的に調べ、破骨細胞の出現状況と比較した。その結果、VEGF低発現群(7例)では破骨細胞はほとんどみられなかったのに対し、高発現群(20例)では多数の破骨細胞が出現していた(P<0.002)。さらに、VEGFの発現とレントゲン所見を比較したところ、低発現群では全例が骨表面に限局していたのに対し、高発現群では広範な浸潤を示す症例が多かった。以上のことから、癌細胞の産生するVEGFは、破骨細胞の分化や働きを促すことにより癌細胞の顎骨内浸潤に関与することが明らかとなった。したがって、VEGFの発現程度の評価が歯肉癌の顎骨浸潤能の予測因子となる可能性が示唆される。

南口 知穂, 徳島大学歯学部, 6年生

間接FGP法術式の開発-機能的咬合面の作製を目指して-

本研究の目的は顎運動測定器と6軸自動制御ステージを用い顎運動に調和した、機能的咬合面を作製するための新たな術式を開発することにある。顎運動の測定は磁気を利用した顎運動測定器を用いた。また顎運動の再現にはパラレルリンク方式の6軸自動制御ステージを用いた。歯列模型を6軸自動制御ステージに取り付け、これを測定した6自由度顎運動に基づいて操作することで、咬合器として使用し、顎運動に調和した機能運動経路の形成を行った。本術式は顎運動を機械的に再現することにより、間接的にFGP法を行うもので、オクルーザルリコンストラクションなど全顎的な補綴処置に適していると考えられる。しかし本研究では形成される機能運動経路の有用性を確認することを目的として、臼歯部に単冠の製作を予定した患者を被験者として選択し、本術式と口腔内FGP法により形成される機能運動経路の比較を行った。被験者により行われる顎運動の種類別に比較を行ったところ、本術式と口腔内FGP法による機能運動経路には若干の違いが認められた。またこの違いは機能運動時に生じる歯列の歪みなどによるものと推察された。

山手 聡子, 長崎大学歯学部, 5年生

歯垢による血小板凝集活性

歯垢を形成する細菌のなかには一部のStreptococcus sanguis菌株のようにヒト血小板凝集性を有するものがあることが報告されている。細菌の血小板凝集は感染性心内膜炎や血栓症などの血管系疾患を誘発する可能性が示唆されている。まず、健康成人歯垢中より分離した41菌株について血小板凝集性を調べたところ、6株に顕著な活性がみられた。そのうちの3 株はS.sanguisと同定された。日常生活や歯科治療時に血管内に偶発的に侵入する細菌は個々の純培養菌ではなく歯垢を構成する細菌集団と考えられるが、歯垢そのものの血小板凝集性については報告されていない。そこで健康成人8人より採取した歯垢について直接、血小板凝集性を調べたところ、3試料は強い凝集活性を示す一方、残りの5試料はほとんど凝集活性がなかった。とくに凝集活性が強かった歯垢についてS.sanguisを分離し、血小板凝集性を調べたところ、S.sanguis biovar 1と同定した3株のうち、1株に顕著な血小板凝集活性がみられた。今回の結果から、口腔から採取される細菌から比較的容易に血小板凝集性をもつ細菌を分離できること、歯垢そのものを用いた実験から血小板凝集性のある歯垢と凝集性のない歯垢が存在することが明らかとなった。

吉田 彩佳, 神奈川歯科大学, 4年生

唾液クロモグラニンAによるストレスレベルの評価および咬合の影響

現代社会で多く人は、種々のレベルのストレス状態にあると考えられ、歯科臨床においてもストレスによるブラキシズムに起因した歯や歯周組織の破壊、顎関節症などが急増している。それゆえ、日常歯科臨床において患者毎のストレスレベルを評価する簡便な方法を開発する必要がある。クロモグラニンA(Cg A)はニューロンの分泌顆粒に見出され、ストレスに対する反応の指標となることが示唆されている。また、Cg Aは唾液中にも分泌され、精神的なストレスによって上昇する血中のノルアドレナリンと相関して上昇することが報告されている。本研究は、ボランティア25 吊を被験者とした。唾液はコットンを口腔内に静置して、5分間唾液をしみ込ませることで採得した。ストレス負荷は上快音(非常ベル)を聞かせることによって行い、その直後に唾液を採得した。採得した唾液は、抗ヒトCg A抗体を用いてELISA法によりCg Aを定量した。唾液Cg Aの変動は、ストレス負荷によって唾液Cg Aが上昇し、その後安静時レベルに戻るタイプ(group A)、ストレス負荷直後は、大きく変動せず15分後に上昇するタイプ(group B)、さらにストレス負荷直後も、15分後もあまり変動しないタイプ(group C)に分けられた。ブラキシズムによって、group A はストレスによる唾液Cg Aの上昇が有意に抑制された。Group Bにおいてはストレス負荷15分後の唾液Cg Aの上昇が抑制された。Group Cにおいては咬合の影響は認められなかった。今回調べた被験者の約65%は、ストレスに対してCg Aが変動した。これらの個体ではブラキシズムによって、唾液Cg Aの上昇は抑制された。このことから、咀嚼やブラキシズムなどの咀嚼器官機能はストレスを軽減させる効果のあることが示唆され、歯科臨床において患者毎のストレス評価が重要であり、また唾液Cg Aの測定によって個体毎のストレス反応が評価できる可能性を示すものであった。

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