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2000 年 8 月 のアーカイブ

第6回大会

2000 年 8 月 25 日 コメントはありません

第6回大会 2000年(平成12年)8月25日 参加校 20校
タイトルおよび発表内容要旨 (入賞者を除き発表者氏名50音順)
※氏名・所属・学年は発表当時

優勝:中島 正裕, 大阪大学歯学部, 5年生

支台形成実習用デンタルミラーの改良

歯学部学生にとり口腔内における支台形成技術の習得は容易ではない.特に直視不可能な部位の切削においては、デンタルミラーを使用しているが、ター ビンからの放水により視野を確保することは困難である.そこで、ミラー表面にエアーを放出させると共に、端部に白色発光ダイオードを配置することで、水滴 の付着を防ぎ、かつ適切な照明が得られるデンクルミラーを製作した。このミラーの効果を評価するため、6名の学生が、マネキンに装着した上顎右側第二大臼 歯に対し、エアーと照明を供給した頃合、および両者を供給しなかった場合の2種類の条件で支台形成を行った.そして、形成した支台歯の遠心面をデジタルカ メラで撮影し、そのマージンの理想的な位置からのずれの面積を求め比較した所、エアーと照明を供給した方が小さい値を示した.この結果から、このミラーは 学生の支台形成の技術習得に有用な補助具となり得ると考えられる.

準優勝:大城 麻紀, 日本大学歯学部, 5年生

歯科用超音波振動装置による罹患歯質の自動切削について

近年、歯質に強固に接着する材料の進歩とともに、健康歯質を可及的に保存する生物学的窩洞形成の概念を背景に、従来からの鋳造修復物に必要であった 窩洞形態に対する様々な規制を必要としない修復治療(Minimum Intervention Dentistry)が普及しつつある.そこで、罹患歯質を選択的に削除することを可能とする生物学的窩洞形成装置として超音波振動切削に着目し、罹患歯 質のみを選択的に切削する方法を検討した.すなわち、超音波振動装置先端に試作ダイヤモンドコーティーングチップを装着し、ヒト抜去歯のう蝕およぴ健康歯 質を切削した.その結果、罹患歯質と健康歯質とでは切削に伴って生じる切削音に違いが認められ、顕著な切削音は健康歯質切削時のみに生じることが判明し た.この切削昔の強弱によって、罹患歯質除去の指標として術者の手指の感覚や視覚以外に、聴覚でのう蝕象牙質除去法が可能であることが示唆された.

第3位:秋月 達也, 東京医科歯科大学歯学部, 6年生

デジタルパノラマX線稚影法における患者被曝線量の低減と画質との関係

CCDセンサーを用いるデジタルパノラマⅩ線撮影法において、被曝線量の低減と画質の低下との関係を量的に明らかにし、臨床的にどの程度の画質低下 が許容できるかを、CR画像と仕較し検討した.CCDセンサーカセッテ(CCD方式)、またはイメージングプレート(CR方式)を検出系とし、頭部ファン トムの撮影を行った.CCD方式では管竜流を1-SmAのS段階に変化させた.6人の観察者がCRT上でコントラスト、輝度を調整しながら、6項目の解剖 学的構造(上顎洞底、下顎頭、カリエス、下顎管、歯根、歯髄腔)について描出の明瞭度を5段階評価した.また、各条件における被曝線量の測定を行った.結 果を分散分析法により分析した.CCD方式では線量が大きいはど高い評価点が得られ、3mA以上で全ての構造物で臨床的に許容できる評価点が得られた.線 量は最大で当病院の撮影条件に比較してCCD方式の約60%まで、 CR方式の約30%まで軽減が可能である.

雨宮 花, 日本歯科大学歯学部, 6年生

喫煙後の唾液中好中球の酵素活性の変化

これまでの研究で、喫煙と歯周組織破壊との強い関連が報告されている。本研究では、喫煙と唾液中の好中球の酵素活性の変化との関連を検索した.被験 者として、健康歯肉を持つ喫煙者3名、非喫煙者3名の協力を得た.唾液中好中球は、Ashkenaziらの方法(J.Den.Res.,68: 1256,1989)により分離した.エラスターゼ、コラゲナーゼ、カテプシンの酵素活性および活性酸素産生能は、CellProbeTM (Coulterter,USA)およびフローサイトメーターで評価した.その結果、喫煙者においてエラスターゼとコラゲナーゼの活性が低下し、カテプシ ンと活性酸素産生能は上昇した.統計解析の結果、喫煙者と非喫煙者間で危険率5%で統計的有差が認められた(対応のないt検定).これらの結果から、喫燈 者の唾液中好中球の酵素活性は変化し、タバコ中の物質が、口腔内で免疫機能を傷害していることが示唆された.

大前 由美子, 朝日大学歯学部, 5年生

エナメル質形成におけるCaイオンの役割

エナメル質形成におけるCaイオンの役割 Caイオンは、歯や骨の構成成分として、また細胞内のシグナル伝達物質として、多様な生物学的機能を持つ.エナメル質形成には多くのCaイオンを必要とす る.しかし、そのエナメル芽細胞内Caイオンの動態とその調節のメカニズムは明らかではない.本研究では、エナメル芽細胞の各発達段階における細胞内Ca イオンのイメージングを行うため、蛍光Ca指示薬であるFluo-3(エステル型)を5, 7, 10日ラット第一臼歯に浸透させ、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った.さらに、Caシグナルに閑わるIP3-R(イノシトール3リン酸レセブター, Type-1)と、Ca結合性タンパクとして細胞内のイオン環境を調節する緩衝型のCalbindin28KD,標的タンパク活性調節型の Calmodulinの局在性を免疫組織化学的に検討した.細胞内Caイオンはエナメル芽細胞の各時期に見られ、象牙芽細胞、骨芽細胞や他の組織よりも高 く見られた.IP3-Rは、分泌前期、分泌期、移行期エナメル芽細胞の局在性は強いが、成熟期初期では、局在性の低下を示した。Calbindin, Calmodulinは、分泌前期、分泌期の近心端と隣接する中間層細胞に強い局在性を示した.成熟期初期では、近心端と遠心側にもっとも強い共存性が見 られた.これらの所見から、エナメル質形成における細胞内Caイオンはシグナル伝達と輸送の両方の役割を持つことが示唆された.

岡部 佐智子, 徳島大学歯学部, 5年生

歯肉溝滲出液中のオステオボンチンの同定

歯周炎の程度や活動性を診断するために、歯肉溝滲出液(GCF)中に存在する種々の生化学的指標が注目されている。オステオボンチン(OPN)は硬 組織の形成や吸収に重要な役割をもつとともに、炎症にも関与する骨基貿蛋白である.本研究の第一目的はGCF中にOPNが存在するかどうかを調べることに ある。実験では、ヒトのGCFサンプルを電気泳動法によって分離展開し、引き続いてOPN抗体を用いたイムノブロット分析を行った.その結果、用いた GCFサンプルすべてにおいて既知のOPNのバンドと同様の分子量54あるいは66kDaの2本のバンドが認められた.歯周炎罹患部GCFと健常部GCF のOPNバンドを比較すると、罹患部OPNが濃いバンドとして観察された.以上より、GCF中にOPNが存在することが明かとなり、歯周炎とGCF中の OPN量との関連をさらに追求するための基本的な結果を導き出すことができた.

桂川 直子, 神奈川大学歯学部, 6年生

骨芽細胞特異的転写因子Cbfa1ならびに骨基質タンパク質遺伝子発現に及ぼすメラトニンの効果

松果体ホルモンであるメラトニンは、サーカディアンリズムの調節と抗活性酸素作用を効能とし、睡眠、鎮静作用、老化防止作用などの多様な薬理作用を もつホルモンとして知られている.最近、メラトニンは骨芽細胞の分化と骨形成を促進し、骨基質タンパク質の発現を上昇させる事が報告された.一方、骨芽細 胞の分化は骨芽細胞特異的転写因子であるCbfa1により調節されている.メラトニンの情報伝達経路はcAMPを介するカスケードが報告されているが転写 レベルの調節機構には不明な点が多い.そこで今回発表者はメラトニンがCbfa1の遺伝子発現に促進的効果をもつか否かを検討するために、培養骨肉腫由来 骨芽細胞様細胞(Saos-2)にメラトニン単独、PTH単独、あるいはメラトニンとPTHを同時添加した際のCbfa1と骨基質タンパク質遺伝子発現量 の変化をRT-PCRとノーザンプロット分析により調べた.その結果、メラトニン単独添加によりCbfa1と骨基質タンパク質であるBSP, typeI collagen, ALPaseの発現が上昇した.また、メラトニンとPTHの同時添加によってCbfa1とALPaseの相乗的な発現上昇も認められた.これらの結果よ り、メラトニンによる骨芽細胞の分化促進や、骨形成の促進効果はCbfa1の遺伝子発現の上昇と同時に生ずる骨基質タンパク質の転写促進が関わっている可 能性が示唆された.

加藤 明美, 福岡歯科大学, 4年生

電位依存性Ca2+チヤネル―痛覚伝達における役割と鎮痛剤の作用点としての可能性

新たな鎖痛薬開発の可能性を探るため、一次知覚神経からの痛覚伝達物質遊離に関与する電位依存性Ca2+チャネルに注目した.歯髄炎を始めとする炎 症牲の痛みを対象とする為に、炎症部位に出現する内因性発痛物質のブラジキニン(BK)とATP(BKと異なる秩序で知覚神経の興奮を起こすと考えられ る)による痛み刺激を与えて検討した.その結果1.BKとATPによる痛みは、それぞれサブスタンスPとグルタミン酸により伝達され、2.前者の遊離はN 型とL型 Ca2+チャネル、後者の遊離はN型とP/Q型Ca2+チャネルによって制御されるなど、痛みの制御に関わるCa2+チャネルの構成の違いと共に、N型 チャネルの重要性が明らかとなった.実際の炎症では様々な発痛物貿が複合的に痛みを形成し、その伝達機構も異なっていると考えられるが、Ca2+チャネル 括抗菜、特にN型括抗薬が末梢性の鎮痛薬として臨床的に応用できる可能性が示唆された.

仙名 智弘, 明海大学歯学部, 4年生

抗てんかん薬フェニトインによるヒト歯肉線維芽細胞の増殖促進機構

抗てんかん薬フェニトインによるヒト歯肉線維芽細胞の増殖促進機構抗てんかん薬であるフェニトイン(DPH)は長期連用を続けると、歯肉肥大を起こ すことが良く知られている.一方、このDPHは生体内でチトクローム P450の分子種であるCYP9C3によって5-(4-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin(HPPH)に代謝されること がわかっている.そこで今回このDPHによる歯肉肥大機序がDPHそれ自身によるものか、代謝産物であるHPPHによるものかを明らかにするために、培養 正常ヒト歯肉線経芽細胞を用いて検討した.その結果、DPHよりもHPPHを投与した方が、24時間及び48時間共により強い細胞増殖促進効果が濃度依存 的に観察された.このことから、フェニトインの服用によって起こる歯肉肥大にはHPPHが関与していることが強く示唆された.

外山 淳子, 奥羽大学歯学部, 4年生

アルジネート印象材の保管条件が石膏模型の表面性状に及ぽす影響

アルジネート印象材の保管条件が石膏模型の表面性状に及ぽす影響アルジネート印象材は、印象採得後の保管条件による経時的な寸法変化が問題であると されているが、石膏模型の表面性状に及ぼす影響についての報告は少ない.そこで、硬質石膏との組み合わせにおける細線再現性と表面粗さについて湘定し検討 した.細線再現性試験用金型を印象採得し撤去直後、大気中、水道水中、保湿箱中、消毒液中に各々30分、60分保管後、硬石膏を注入し試料を作製して比較 した.5個の試料全てにおいて細線を再現した条件は撤去直後と保湿箱中30分、消毒液中30分であった.消毒液中30分と保湿箱中30分では撤去直後の試 料と同等な表面粗さを示した.以上の結果より、アルジネート印象材は可及的に撤去直後に石膏を注入することが最良であり、前記2つの保管条件でも良好な表 面性状が得られた.

田口 洋一郎, 大阪歯科大学, 5年生

21世紀に向けての最も効果的な初期齲蝕検出法とは?

疾病梼造の変化により21世定の口腔内は齲蝕減少を示すため、歯科医療は「早期発見・早期治療」から「健康増進・疾病予防」へ向うと考えられる.そ のためにはinvisibleな初期齲蝕の早期発見が8020運動などの口腔保健戦略上重要で、正確さと時期が予防や健康増進の成功につながると考えられ る.最近、初期齲蝕の早期検出機器が多数出現し、臨床で応用され始めているが、これらがどのくらいの精度があるかはほとんど知られていない.そこで、今回 初期齲蝕の正確な検出およびinvisibleな初期齲蝕の検出について検討する日的で、2種類の早期齲蝕診断機器を使用して、通常の口控内診察である視 珍と比較した結果、これらの早期齲蝕診断機器は歯の侵食に対する診断法およぴ表層下脱灰を検出できる診断法であることがわかった.

竹田 まゆ, 日本歯科大学新潟歯学部, 4年生

在宅歯科診療における経皮的酸素飽和度計の患者管理モニターとしての有用性に関する研究

軽量で手軽に持ち運びでき、経皮的酸素飽和度(SpO2)を連続的に測定できる経皮的酸素飽和度計を在宅歯科往珍患者の全身管理モニターとして使用 し、その有用性を検討した.在宅歯科往診患者の診療前・診療中・診療後のSpO2を測定し、さらに術者に全身管理モニターとしての有用性を、また患者にも 本器装着の感想を評価してもらった.患者は、男性22名、女性31名の計53名で、基礎疾患は脳血管傷害62.3%、呼吸器疾患15.1%が大部分を占め ていた。処置中にSpO2が低下した症例は47.2%で無変化群との間に統計学的有意差が認められた.処置時間について比較した結果、低下群38.8分、 無変化群29.9分と有意差が認められた。術者の評価は有用であるが 77.4%を占めた.患者の評価では84.9%については不快などの訴えはなかった.血液の酸素化は生命維持の基本であり、特に身体的に不利な条件の多い 在宅患者におけるSpO2の測定は、必要不可欠のものと考える.

中富 満城, 九州大学歯学部, 5年生

日欧人顔画像に対する日本人の認識における差異

他者を識別する上で最大の特徴となる人間の顔を研究対象とする顔学は近年注目を浴びている.また本人との類似性を維持したまま顔画像の構成要素を限 界まで削減する手法が情報通信やセキュリティシステムの分野で注目されている.本研究では多変量解析の一つである主成分分析を応用して日本人およぴ北欧人 の顔画像の構成成分を段階的に削減し再構成画像を作成した.原画像と再構成画像こ対する類似性認識に人種間の差異が存在するか否かを検討した.その結果、 相関係数0.95~0.85の顔画像においては双方に著明な差異は認められなかったが、相関係数0.75~0.65において有意差が認められた.すなわち 構成成分を削減するに従って同じ削減率の日本人の顔画像と比較すると北欧人の顔画像には類似性を見出しにくくなる傾向にあった.本研究は心理学でいう他人 種効果を支持する結果となった.

西田 知弘, 愛知学院大学歯学部, 5年生

インターネットを利用したデンタルフィルムの画換自動転送システムの構築

歯科医療において口内法Ⅹ線写真を迅速に入手し、疾病の診断、治療計画の立案等を行う事はきわめて重要である.しかしながら病院内あるいは歯科医院 内においてフィルムを撮影・現象する場所とチェアーとの距離が離れていることから時間ロスを生じる事も少なくない.一方最近LANの発達はめざましく、コ ンピューターの性能の向上とともに画像情報の転送を高速に行うことが可能となってきた.そこで我々は汎用のパーソナルコンピューターならびに周辺機器を用 いて、口内法Ⅹ線写真を簡便に術者に自動転送するシステムを開発することを試みた.その結果、撮影後の口内法Ⅹ線写真をフィルムスキャナーにセットし患者 名を記入するのみで自動的にデータベース内に格納し、かつホームページ上に表示する試作システムの開発に成功した.また、E-mailによる自動転送シス テムも同時に開発を行い、術者の手元に直接画像を送ることも可能とした.

花岡 宏一, 九州歯科大学, 6年生

ネパールでの活動を通した発展途上国における歯科保健医療協力

近年、日本をはじめとする先進国では歯科保健サービスは整って来た.個人を対象とした齲蝕予防と歯科参療に対する需要と供給のバランスは満足する状 況にあると言える.一方、途上国の歯科保健体制は人口に対する絶対的な歯科医師の不足により、満足に整っていないのが現状である.今回、途上国のネパール における国際歯科保健協力の活動内容から、先進国の歯科医師に求められる協力体制こついて検討した.その結果、日本と比較してネパールの口腔状祝は芳しく なく、また歯科医療に対する知識も少ないことが埋好できた.そこで、先進国は何ができるかを模索した結果、自立を日的とした口腔保健の確立が効果的である ことがわかった.このようなネパール歯科医療協力会の活動は大変有意義なものであると考えた.今後益々、先進国の発展途上国に対する歯科医療協力は必要と なると考えられ積極的に行うべきであることがわかった.

濱平 須美子, 北海道大学歯学部, 6年生

アデノウイルスE1B55kDaによるp53ファミリーがん抑制適伝子p73の機能失活-E1Aの関与-

がんの発症には、複数の遺伝子異常、とくにがん抑制遺伝子の機能の抑制が重要であることが近年明らかになった。アデノウイルスは代表的なDNAがん ウイルスで、ウイルスゲノム中のE1領域に存在するE1Aは、がん抑制遺伝子Rbと、E1Bが産生するこつのウイルスがん遺伝子産物のうち、 E1B-55kDa タンパクはがん抑制遺伝子産物p53と結合しその機能を抑えることにより細胞がん化を導くことが知られている.E1B-55kDaは近年発見されたp53 の新たなファミリーのp73には給合できないと報告されてきたが、我々は293細胞(ヒト腎細胞を E1AとE1Bでがん化させた細胞)中では両タンパクが結合することを見出した.このE1B-55kDaとp73タンパクの結合には、293細胞中の E1Aタンパクの存在が必要であることが示され、E1Aによるタンパク結合の強化により、E1B-55kDaはp53だけではなくp73の機能も抑制し、 細胞がん化を促すことが示された.

平岡 雅恵, 広島大学歯学部, 6年生

歯周細胞の増殖・分化に対するエナメルタンパクの影響

歯の発生過程における歯周組織細胞の分化にエナメルタンパクが関与することが報告され、歯周組織の再生にも関与することが注目されつつある.これま でにエナメルタンパクが、歯根膜細胞(PDLF)の増殖を促進するという報告があるものの、他の歯周組織構成細胞の増殖や分化に対する作用の詳細は明らか になっていない.そこで、本研究では歯周組織再生に囲わるPDLF、歯肉線経芽細腹(GF)、歯肉上皮細胞(GE)、骨芽細脇(OB)ならぴにセメント芽 細腹(CB)の増殖・分化に対するエナメルタンパクの影響を検討した.その結果、エナメルタンバクはPDLF、OB、CBの増殖・分化を促進する一方で、 GE やGFの増殖を抑制した.以上より、エナメルタンバクが歯周組織再生療法において結合組織性新付着と骨レベルを獲得するのに臨めて合目的的な生物活性を有 することが示唆された.

武藤 憲生, 鶴見大学歯学部, 4年生

ヒト唾液中におけるEGF(上皮成長因子)濃度の年齢による推移

ヒトEGFは細胞増殖刺激作用と強い胃酸抑制効果があることが知られている.唾液中には比較的高濃度のEGFが存在し、口腔や消化管の粘膜上皮の創 傷治癒および粘膜保護に関わると考えられる.また、母乳中にも高濃度に存在し、発育過程を促進すると思われる.そこで、成長期にある小児の唾波中EGF濃 度は成人よりも高いのではないかと予想し、各年齢層の唾液EGF濃度を測定した.健常人から全唾液サンプルを採取し、全タンパク質濃度とEGF濃度を定量 した結果、タンパク質濃度は年齢とともに増加し、高齢者が最も高値であった.しかしEGF濃度は小児から成人までほぼ一定(1ng/ml)であったが、高 齢者においては約2倍の高濃度を示した.従って、当初の予想に反し、高齢者の方が唾披中に高濃度のEGFが存在することが明らかとなった.この結果は、高 齢者に見られる生体防御能の低下を補償するためにEGF値が上昇した可能性を示唆している.

八幡 誠, 鹿児島大学歯学部, 5年生

ラットにおける舌癌発生に拘わる遺伝子のマッピング とくに第20番染色体について

急速な発展を遂げてきた遺伝子解析において近年その研究対象は、先天性代謝異常などの単一遺伝子の異常により起こる疾患にとどまらず、多数の疾患感 受性遺伝子がその発病に関わる高血圧・糖尿病・動脈硬化、そして癌などの生活習慣病にも拡がっている.これらの遺伝子の研究により、これらの疾患の予防法 と根本的療法の道が開かれることが期待される.我々の講座では、舌癌好発系ラット(Dark-Agouti)と舌癌嫌発系ラット (Wistar/Furth)を用いて舌癌発生に関わる遺伝子の研究が行われ、これまでに5つの発癌感受性遺伝子を見出している.今回、免疫反応に影曹を 及ぼすMHC(主要組織適合抗原複合体)と舌癌発生との関連を明確にすることを目的に、130匹のF2ラットを用いてMHC遺伝子が存在する第20番染色 体の解析を行った.その結果、さらに6番目の感受性遺伝子(Tscc6)がMHC遺伝子座に近接して存在していることが示唆された.なお、Tscc6候補 遺伝子としてMHC遺伝子のほかにTNF-alphaなども考えられる.

山崎 学, 新潟大学歯学部, 6年生

なぜ歯根嚢胞にコレステロール肉芽腫ができるのか-その病因に関する組織学的検討-

歯根嚢胞壁にはしばしばコレステロール肉芽腫が形成されるが、その機序は不明である。そこで、コレステロールが嚢胞壁に濃縮される機構として、基底 膜型へバラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)コア蛋白質第二ドメインには低密度リポ蛋白質(LDL)リセプタ様構造があることに注目した.すなわち、 LDLが基質の HSPGに結合することを想定して、嚢胞壁での両分子の局在を組繊化学的に検索した.歯根嚢胞33症例のホルマリン固定パラフィン連続切片を作製し、酵素 抗体法でHSPGおよぴアポ蛋白質(apo)B、酸化(Ox-)LDL の局在を比較検討した。その結果、HSPG強陽性を示す粘液・浮腫状の幼若肉芽組織の基質に一致して、また同部の泡沫状マクロフアージにapoBとOx- LDLの陽性がみられた.また、in-situハイブリダイゼーション法によりHSPGのmRNA発現を検索し、線維芽細胞と血管内皮・周皮細胞が HSPG産生担当細胞であることを確認した.以上より、肉芽組織で豊富に産生されるHSPGがLDLを捕捉し、この処理にマクロフアージが動員され、どう 細胞に貪食後放出されたコレステロールが濃縮結晶化する端緒となる可能性が示唆された.

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